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2024.09.07

  • コラム

2024年(令和6年)診療報酬改訂|スケジュールや押さえるべき改訂のポイントをわかりやすく解説!

診療報酬改定 2024

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

医院で治療を受ける際に保険治療費用のベースとなるのが診療報酬です。この診療報酬を基に治療費用が決まっていきます。この診療報酬は2年おきに改定されます。2024年に関しても診療報酬改定が行われました。

本記事では2024年の診療報酬改定に着目し、2024年の診療報酬改定のスケジュールや、必要性や影響などを解説します。

2024年の診療報酬改定の解説の前に診療報酬とは何かを解説

診療報酬改定 2024

2024年の診療報酬改定についての解説をする前に、そもそも診療報酬とはどのようなものなのかについてご紹介します。

診療報酬は医療行為に対する対価

診療報酬は医療行為に対する対価です。窓口において患者は診療報酬に沿う形で対価を支払います。この診療報酬は1点10円で計算され、診療報酬が1000点であれば1万円となります。

ただし、日本には国民皆保険制度が存在します。基本的に患者は医療費の3割負担となるため、窓口では3,000円を支払う形です。残りの7割は保険組合などが支払うことになり、医療機関は1万円分の診療報酬を手にできます。

保険診療は医院で値段を決められない

診療報酬改定 2024

一般的なサービスはそれぞれのお店が値段を決めますが、医療機関に関しては保険診療については値段を勝手に決めることはできません。診療報酬が事前に決められているためで、日本全国どこでも値段は変わらない仕組みです。

この診療報酬が医療機関の経営に大きな影響を与えます。どれだけ苦しい懐具合であっても、引き上げることができません。多くの医師を抱えたくても診療報酬が決まっている分、その中からやりくりをしないといけないので大変です。

2024年の診療報酬改定はなぜ必要なのか

診療報酬改定 2024

そもそも2024年の診療報酬改定はなぜ必要なのか、その理由について解説します。

常に適正な状態を保つため

診療報酬の改定は、適正な状態を保つために行われます。診療報酬は一度決まれば簡単には動かせないため、市場原理が働きません。診療報酬改定を通じて、市場の状況に沿う形にして、市場原理を働かせるような形にしていきます。

医療機関からすれば、診療報酬がどんどん上がればそれに越したことはありませんが、患者の立場からすれば負担額が増すばかりでなく、国民健康保険などの保険料が上がる可能性があります。

かといって、安くすればするほど、大きなしわ寄せが出るのが医療機関です。診療報酬から医師や看護師、歯科医師や歯科衛生士や歯科技工士などの報酬を払わないといけないので、経営が成り立ちません。さまざまな点から、適正な状態を保つことが求められるのです。

2024年の診療報酬改定が行われる流れ

診療報酬改定 2024

2024年の診療報酬改定はどのような流れで行われるのか、ここからは改定までの流れについて解説します。

改定作業は1年前から

2024年の診療報酬改定は1年前、2023年4月から始まっています。中央社会保険医療協議会、通称中医協が診療報酬に関するリサーチを行い、国は国で、社会保障費などの予算を決めた上でおおよその方向性を決めます。

国の方針や中医協のリサーチなどを踏まえて、診療報酬改定に向けた動きが激しくなっていきます。社会保障費の上昇を国としては抑えたい一方、物価が上がっているため、物価上昇分を診療報酬に反映させる必要があるのも確かです。

このような議論を国の予算が決まる12月までに行い、最終的な内容を定めます。あとはどんな内容で改定を行うのかを周知し、全国の医院に伝えますが、この段階でさまざまな疑問が投げかけられることもあります。その場合は疑問に対するアンサーを短い期間で返して、診療報酬改定が確定するという流れです。

2024年の診療報酬改定のスケジュール

診療報酬改定 2024

2024年の診療報酬改定のスケジュールは、これまでのスケジュールとは異なる部分があります。例えば、2022年におけるスケジュールでは4月から診療報酬の改定が行われていました。しかし、2024年の診療報酬改定のスケジュールは2024年6月1日からと、2か月後になっています。

後ろ倒しになった背景には、後ろ倒しに伴う負担の軽減が挙げられています。今までは改定すると、色々な仕組みを変えるなどして最初のうちは手間がかかりやすく、負担になりやすい背景がありました。改定が決まってからスタートするまでの期間が短いため、対応するのが大変だったのです。

一方、マイナンバーカードに保険証の機能を入れる動きが強まり、いわゆる「医療DX」を加速させる必要もありました。これらの動きも相まって、6月からスタートする形で動くことになったというのがここまでの流れです。

2024年の診療報酬改定のポイント

診療報酬改定 2024

ここからは2024年の診療報酬改定のポイントについて解説していきます。

賃上げを考慮した診療報酬の改定

各業種では春闘が行われ、ほとんどの企業が大きなベースアップを獲得し、近年まれにみる高いベースアップを実現させました。一方で医療業界が同じようなベースアップをすれば、社会保障費の高騰が深刻なものとなりかねません。そこで初診料や再診料を上げる形で診療報酬の改定を行っています。

初診料は改定に伴い3点、再診料は2点分上がったほか、外来・在宅ベースアップ評価料と呼ばれるものが新設され、初診料と再診料に加算されます。外来・在宅ベースアップ評価料は賃上げのためのもので、賃金の改善を行った医療機関が対象です。

外来・在宅ベースアップ評価料は医師以外の医療従事者が対象で、看護師や薬剤師、歯科衛生士、歯科技工士などが該当します。

生活習慣病管理料の導入

診療報酬改定 2024

2024年の診療報酬改定において、生活習慣病管理料の導入も決定しています。糖尿病や高血圧などの病気に関連した治療管理を行う際に必要なもので、糖尿病だと760点、高血圧症だと660点という形で診療報酬が決められていく形です。

元々は特定疾患療養管理料という項目において診療報酬に加算されてきました。中高年の人であれば高血圧症や脂質異常症などを抱えている人は少なくありません。医院としては貴重な収入源でしたが、特定疾患療養管理料からこれらが除外され、代わりに生活習慣病管理料の導入が行われました。

医療DXの推進

2024年の診療報酬改定では医療DXの推進もポイントになっています。いわゆる「マイナ保険証」の利用を想定した診療報酬改定が行われており、医療DX推進体制整備加算という項目が新設されています。電子カルテや電子処方箋の導入などが行われ、マイナ保険証をより使いやすくしていくための取り組みが盛り込まれている形です。

また情報通信機器を活用して精神療法を行った場合に対する診療報酬が新設されています。オンライン診療は新型コロナウイルスの影響で限定的に認められ、ここ数年で初診時からも利用できるようになった背景があります。オンライン診療における初診料や再診料の新設も行われるなど、医療DXの推進は今後も続いていくことでしょう。

2024年の診療報酬改定が与える影響

診療報酬改定 2024

ここからは2024年の診療報酬改定が与える影響について解説をしていきます。

特定の診療科で報酬が削減されやすくなる

2024年の診療報酬改定で生活習慣病を中心とした病気を扱う診療科において、診療報酬が減ってしまう恐れが強まっています。特定疾患療養管理料が使えなくなり、生活習慣病管理料を使わなければならなくなるためで、賃上げのための診療報酬アップも、生活習慣病管理料への切り替えで相殺されると言われているのです。

それだけ生活習慣病は身近な病気であり、特定疾患療養管理料が活用されてきたことを意味します。これを生活習慣病管理料にするだけで、医療費は1000億円程度削減できると言われており、そのあおりを受ける医院が出てくることは明らかです。

歯科においてはプラスに働く

歯科医院においては診療報酬改定がプラスに働くケースが見られます。例えば、口腔内スキャナーと呼ばれる口の中をスキャンできる装置があり、これを利用する際に保険が使えるようになりました。

口腔内スキャナーを使うことで口の中を3Dで示すことができるようになり、直接見えにくいところもしっかりと見えるようになります。今までは日本でさほど普及してきませんでしたが、すべては保険が使えなかったからです。しかし、レントゲンのように放射線を使う必要がなく、誰でも活用できるのが口腔内スキャナーのいいところです。

患者にとっては詰め物を入れる際にわざわざ柔らかい粘土のようなものを噛み続けて不快な思いをする必要もなくなります。

このように診療報酬改定の影響によって、利便性が高まるケースも存在するため、一概に良し悪しを断言するのは難しいと言えるでしょう。

診療科によっては賃金アップにつながる

診療報酬改定 2024

賃上げに活用するために診療報酬改定が行われることもあり、特定の診療科によっては賃金アップにつながると言われています。初診料や再診料のアップによって医療従事者全体で2年間で5%近い賃上げが見込めるとされており、医療従事者の年収が上がっていく動きにつながるのです。

しかし、生活習慣病管理料など利益に悪影響を与えかねないものも改定に加えられるため、診療科によっては大きな影響を与える可能性もあります。総合病院のように複数の診療科があれば別ですが、内科に特化した病院では大きな影響を受けやすくなるため、今後の動きに注目が集まります。

まとめ

診療報酬改定 2024

診療報酬改定に伴い、さまざまなところで影響が生じようとしています。社会保障費の抑制と医療従事者の賃上げは相反するものだからこそ、診療報酬改定に向けて多くのバトルが展開されてきました。

一方で口腔内スキャナーのように、歯科医院を利用する患者にとって利便性が高まるケースも出てくるなど、必ずしも悪いことばかりではありません。診療報酬改定がどのように変化したのか、なぜ変化する必要があるのかまでチェックすると、色々な思惑が見えてきます。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者