できれば歯科医院に行かないように、日々の歯磨きなどを徹底する人がほとんどです。しかし、セルフケアをどれだけ頑張っても時に虫歯や歯周病などになってしまうことがあります。一方で、歯科医院に行かない人の割合は無視できないものとなっており、注意すべきポイントです。
本記事では歯科医院に行かない人の割合に着目し、その割合や増減の影響などをご紹介していきます。
目次
歯科医院に行かない人の割合に着目すべき理由
歯科医院に行かない人の割合に着目すべき理由とは何かについてまず解説していきます。
歯科医院に行かない人の理由を知ることにつながる
歯科医院に行かない人の割合を知ることは、なぜ歯科医院に行かないのかという理由を知ることにもつながります。例えば、過去に行われた調査では、治療しなければならない状況だとわかっていながら治療を放置している人の割合が全体の3分の1を超えるというデータがあります。
歯科医師の立場で考えれば驚愕する状況と言えますが、実際にその理由に触れていくと、時間のなさを挙げる人が最も多く、費用面や治療への苦手意識などを挙げる声も多く聞かれました。
こうして、歯科医院に行かない人の理由を知ることは、いかにして歯科医院に行かない人の割合を下げていくかを考えていく際に大切です。時間がないことを理由にしている人を歯科医院に行かせる場合にどのような対策を立てればいいかを考えればいいからです。
単に歯科医院に行かない人の割合をチェックするだけでなく、その理由までチェックしていくと、おおよその状況をつかむことができます。
歯科医院に行かない人の割合はどれくらい?
ここからは歯科医院に行かない人の割合について具体的な数字を解説していきます。
2010年の調査結果からわかること
2010年に行われた歯科医院への通院に関するアンケートでは、現時点で通院している人がおよそ4割弱で、年代別で見ると70代が5割強、20代から40代が2割台という状況であることがわかりました。
歯に対する健康意識は非常に高く、回答者のほぼすべてが歯の健康は大切であることを認識しています。にもかかわらず、歯の治療をしないで放置している割合は全体の4割弱もいるのです。
「時間がない」ことを理由にしている割合が高いのは若い世代で、「治療が苦手」だったり、「費用が心配」だったりする人はどの年代にも一定数存在していることも明らかになっています。
参照:全国保険医団体連合会「歯科医療に関する市民アンケート調査結果(最終)」
ライオンが行った2022年の調査
株式会社ライオンが行った2022年の調査では、1年に1回以上歯科健診を受けている人の割合はおよそ4割強となっており、全く受けていない人は全体の4割弱でした。2010年の調査と比較してもほぼ同じと考えていい数値と言えます。また全く受けていない人は、若い世代を中心に少なく、年齢を重ねていくと増えていく傾向も同じです。
ライオンの調査では、歯科健診をあまり受けていない人に対する調査も行われ、そもそも歯科健診で何を行っているかを理解していない人が8割以上となっていました。一方で若い世代は歯科医院に対する意識が高く、結果として虫歯がある若い世代が減っているという結果も出ています。
少なくとも今の若い世代、特に10代までは歯科医院に通うことへの抵抗感がないため、いかにして20代以降につなげていくかが重要になると言えるでしょう。
参照:株式会社ライオン
歯科医院に行かない人の割合が増えるとどうなる?
もしも歯科医院に行かない人の割合が増えるとどうなってしまうのか、増えた場合に想定されることをまとめました。
将来的な医療費の増加
歯科医院に行かない人の割合が増えることは、将来的な医療費の増加を意味します。2012年度の調査では歯科診療医療費は3兆円弱もあり、年々歯科診療医療費は増えている状況です。歯科診療医療費と同列に値するものはガン治療に対する医療費などが挙げられ、決して無視ができるものではありません。
多くの人は歯科健診を受けておらず、何らかの異常が見つかってから利用する人が多いため、複数回の治療が余儀なくされます。歯科健診を行っていれば1回で済む通院が、複数回になってしまい、その分医療費がかかるのです。
歯科健診に行かない人の割合を増やすことは、何らかの異常を感じてから渋々歯科医院に行くことになった人の割合を増やすことを意味し、結果として医療費の増加につながります。
歯を失う人の増加
歯科健診に行かない人が増えることは、何らかの症状を訴えてから歯科医院に行く人が多いことを意味するため、その時点で何らかの異常が生じていると言えるでしょう。虫歯や歯周病などになっている人が多く、最終的に歯を失ってしまう人が増えてしまいます。
仮に歯科健診を受けていれば、虫歯や歯周病を初期段階で見つけ、早期に治療することができ、歯を失う可能性を下げられるのです。
全身の疾病の増加
意外と知られていないこととして、歯周病などを放置することで全身の疾病の増加につながることが明らかとなっています。最も有名なのは歯周病と糖尿病の関連性です。歯周病があることで炎症に関与する化学物質が体内に出されてしまい、その化学物質の存在がインスリンを効きにくくさせるのです。つまり、歯周病が進行すればインスリンが効きにくく糖尿病になりやすいと言えます。
一方で歯周病の治療を重ねることで血糖値が下がる効果も見られます。早期に治療を重ねることは糖尿病治療に効果を発揮するため、糖尿病患者はかかりつけの歯科医院を見つける必要があり、糖尿病を治療する医師から指示を受けることになるでしょう。
歯科医院に行かない人の割合が増えれば、こうした糖尿病患者が増えることを意味するため、割合を減らしていくことが重要です。
歯科医院に行かない人の割合を減らすための対策
ここからは歯科医院に行かない人の割合を減らす対策についてご紹介します。
国民皆歯科健診の導入
近年話題となっているのが国民皆歯科健診です。会社員などは定期的に健診を受けており、原則として健診を受けることが義務と言えます。一方で歯科健診は現状では義務となっていませんが、今後歯科健診も義務になる可能性が指摘されています。
仮に歯科健診を義務化させ、会社の負担で受けられるようになれば、時間がないことや費用面などの心配をせずに受けられるため、会社員などからすれば一石二鳥以上の効果に期待が持てます。
自治体の支援
費用面に対する心配をする方にとって活用していきたいのが自治体の支援です。現状では、一定の年齢に達したら安い費用で歯科健診が受けられるという自治体が多く、500円程度の自己負担で受けられるケースが目立っています。
しかし、30歳や40歳など区切りの年齢で受けられるケースが多いため、1年に1回受けられるような状況にはありません。これを1年に1回受けられるよう、国が自治体を通じて補助金を出すなどしていけば、十分に対応は可能です。
歯科健診は本来3,000円程度で利用できますが、これが500円程度の自己負担で済むとわかれば、多くの人が利用しようと思うはずです。将来の医療費削減を考える際に自治体が支援を行うのも有力な対策の1つと言えます。
歯科医院に行かない人の割合にかかわる定期健診に通う人・通わない人の違い
本項目では定期健診に通う人・通わない人の違いについて解説します。
信頼できる歯科医院かどうか
定期健診に通い続ける人とそうでない人の違いとして、そもそも信頼できる歯科医院を知っているかどうかがポイントに挙げられます。歯科医師が信頼できる人であれば、「そこに通っていれば安心」、「あの先生に診てもらっていれば問題ない」という状態になり、定期的に通うモチベーションになります。
逆に、信頼できる歯科医院がないと歯科医師に対する不信感などが根底にあるため、歯科健診そのものへの不信感に直結します。定期健診に通う人・通わない人の差には、信頼できる歯科医院の有無が関係していると言えるでしょう。
通いやすい歯科医院かどうか
時間がないことを理由に歯科医院に行かない人が一定数いることから、通いやすい歯科医院かどうかも大事な要素となります。例えば、駅に隣接した歯科医院であれば通勤通学の最中に立ち寄ることができるでしょう。こうした通いやすい歯科医院を見つけているかそうでないかで、定期健診に対する考え方も変わると言えます。
費用面が明瞭な歯科医院かどうか
定期健診に関して、費用面への不安を通わない理由にしている人がいます。実際に定期健診でいくらかかるかをはっきりと明示している歯科医院は意外と少なく、おおよそ3,000円程度などという記載が目立ちます。
一方で、健診の範囲に応じて診療報酬も変わるため、明確に打ち出しにくいという事情もあります。それでも費用面においてできる限りの説明を尽くしている歯科医院だと安心して定期健診を受けられるでしょう。
歯科医院に行かない人の割合は今後どうなっていく?
歯科医院に行かない人の割合は、国民皆歯科健診を行わない限りは一定の水準で高止まりする可能性が高いです。歯周病と糖尿病の関連性が指摘されたとしても、結局歯科医院に行こうとする人は少なく、何か異常がない限りは足を運ばない人がほとんどです。
今後、健診義務化などの動きがあれば行く人の割合が増えていくでしょうが、それらがない場合には今後も行かない人の割合が高い状態のままとなりかねません。
まとめ
歯科医院に行かない人の割合は全体の3分の1を超える高い水準だが、今の若い世代は他の世代と比較すると歯科医院に対しての恐怖心などがない傾向にあるため、若い世代が大人になってからも歯科医院に行く習慣が身につくようになれば、歯科医院に行かない人の割合は減少していくのではないでしょうか。
そのためには、国民皆歯科健診の導入を始め、気軽に歯科健診に参加できるような仕組みを作っていくことが求められます。