女性活躍が叫ばれる時代にあり、女性がさまざまな分野で活躍する機会が目立ち始めています。その中でも医師の仕事に携わる女性は年々増えており、歯科医師も同様です。女性が目指す職業として歯科医師はどうなのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では女性歯科医師に着目し、現状の人数や年収、メリット・デメリットなどを解説していきます。
目次
女性歯科医師の推移
ここからは女性歯科医師の人数や割合の変化についてご紹介します。
人数・割合共に増加
厚生労働省の調査では、女性歯科医師の人数や割合は年々増加の一途を辿っており、女性が歯科医師になるケースが増えていることは明らかです。令和4年に行った調査では、全体の歯科医師は105,267人で、そのうち女性は27,413人と全体の26%を占めています。平成初期は15%にも満たなかった割合が10%以上増えている形です。
参照:厚生労働省
年代別の割合でみると、20代における女性歯科医師の割合が40%以上を占め、歯学部に進学する女性の割合もおよそ40%程度と高めです。男女同数まではあと一歩のところまで来ており、女性歯科医師の活躍の場が増えていることは紛れもない事実と言えます。
女性歯科医師の年収について
ここからは女性歯科医師の年収について解説していきます。
年収における性別差はなくなりつつある
女性歯科医師の年収と男性歯科医師の年収を比較する際、平成に行われた調査では男性と女性でかなりの差が見られました。これだけを見れば、男女差が激しいことが言えますが、令和での調査ではむしろ女性の平均年収の方が高く、時代によって年収に大きな違いがみられます。
こうした調査を見る限りでは、少なくとも性別差はほとんどないと考えてよく、男性の方が稼げる、女性の方が稼げないというのは考えにくいことが言えます。
年収を分けるとすればキャリアの差
診療報酬が収益源となる医師の世界において、使う器材に体力差が出にくい状況を鑑みると、男女差が出る仕事と言えないのが歯科医師の仕事です。ゆえに同じキャリア、同じスキルであれば、本来男女で同じような年収になるのは当然です。しかし、過去には男性歯科医師の平均年収の方が高かった時代がありました。
この要因はライフイベントの存在が考えられます。女性の場合は妊娠、出産、育児といったライフイベントが待っており、そのたびに休職や退職を余儀なくされる傾向にあるのです。日本歯科医師会が行った調査では、女性歯科医師の4分の1が一時的にでも歯科医師としての仕事を辞めていた経験を持っています。そのほとんどは子供を要因としたものです。
こうした給料は勤続年数などで決まることが多く、キャリアが途切れることが少ない男性歯科医師と出産や育児などで途切れやすい女性歯科医師で差が出るのはある種当然の現象と言えます。退職を余儀なくされた女性歯科医師は年収が下がった状態で再び復帰する形となる分、平均年収を押し下げる形になったのです。
近年は一時的に休んでから職場復帰をするケースが増えるなど、わざわざキャリアを途絶えさせずに済む状況が増えてきました。また、働きたくても働けない状況も少しずつ減ってきており、結果的に退職しないで済む形になってきたこともいい影響を与えています。
女性歯科医師になるメリット
本項目では女性歯科医師になるメリットについて解説をしていきます。
歯科医院への苦手意識を持つ患者からの支持を集めやすい
歯科医院に対して苦手意識を持つ患者は意外と多く、男性であっても歯科医院での治療が嫌で、治療しなければならないのに放置してしまい、取り返しのつかない事態を招くケースが出てきます。
女性歯科医師に担当してもらう場合、同じ治療を受けるとはいえ、幾分かは安心して身を委ねやすいほか、同じ女性相手、もしくは子供からも支持を得られやすくなります。男性歯科医師では怖いイメージが先行しやすいですが、女性歯科医師はそうしたイメージが少ないのも大きな要因です。
歯科衛生士や歯科助手との連携がうまくいきやすい
歯科衛生士や歯科助手はそのほとんどが女性です。男性歯科医師と女性歯科衛生士の組み合わせだと、男性歯科医師が多少厳しめな注意をパワハラに思われやすく、ちょっとしたことで勘違いされることもあります。
その点、女性歯科医師と女性歯科衛生士の組み合わせは同性同士なので、ちょっとしたことで勘違いを生む可能性は低くなります。女性同士の方が関係性を深めやすく、より連携して治療などを進めやすくなる点を見ても、女性歯歯科医師の方が都合がいいケースがあるのです。
退職しても復帰しやすい
女性歯科医師の4分の1が過去に歯科医師の仕事を辞めた経験を持っており、そのほとんどは子供が関与したものです。出産は体力的にきつく、体力の回復に時間を要するケースもあります。ライフイベントの変化の影響を受けやすい中、女性歯科医師の場合は復帰がしやすいのが特徴的です。
女性歯科医師としてのニーズは常にあるため、以前ほどの年収を復帰直後は確保できなかったとしても、今後取り戻していくことは十分に可能です。また勤務時間も朝から夕方までと決まっていることが多く、保育所の融通がつきやすいところであれば、早々に復帰しやすいと言えます。
女性歯科医師になるデメリット
次に女性歯科医師になるデメリットについて解説します。
人間関係の問題
歯科医院の場合、歯科衛生士や歯科助手は基本的に女性が中心となります。メリットの部分では連携のしやすさを挙げましたが、あくまでもうまくいった場合です。女性同士の人間関係は時にうまくいかないことも往々にしてあるため、女性中心の職場環境が仇となる可能性があります。
歯科医師の立場なので、歯科衛生士などと比べれば立場的には上になりやすいですが、協力を得られにくくなる可能性などもあるため、その点には注意が必要です。
一時的な離職を余儀なくされる
妊娠や出産、子育てなどが相まって一時的な離職を余儀なくされることがあります。この「一時的な離職」の間に歯科に関する最新情報がアップデートされるほか、長らく施術を行わない影響で腕が鈍ってしまう可能性もあります。
たとえ、一時的な離職をしていたとしても常に歯科に関する最新情報を取り込んでいき、速やかに復帰して対策を練るようなことが求められるでしょう。
女性歯科医師のプライベートについて
本項目では女性歯科医師のプライベートについて解説していきます。
ライフイベント関連について
女性歯科医師の出会い、結婚などライフイベントに関しては、男性の歯科医師との結婚が多い傾向にあります。歯学部時代の同級生や先輩後輩、歯科医院の同僚などがお相手になることが考えられ、出会った場所に若干の違いはありますが、歯科医師と結婚するという点で共通しています。
歯科衛生士や歯科助手は女性が中心のため、男性の歯科衛生士や歯科助手との結婚の可能性は現実的に考えにくいのが実情です。男性の歯科医師以外となると、歯科医院の外に出会いを求めていくほか、歯科医師としての立場が世間的にいい分、あとは相手の条件次第という形で探しやすくなります。
世間一般と同じスケジュールで動きやすい
最近の歯科医院は土日祝日でも営業する機会が増えていますが、一般的にはカレンダーと同じようなスケジュールで動きます。土日祝日と木曜日をお休みとする歯科医院が一般的に多いため、世間一般のスケジュールとほぼ同じような形と言えるでしょう。
大型連休に関しては、カレンダー通りに動き、いわゆる「飛び石連休」的なスケジュールで動くケースが多くを占めています。デートをしようにもスケジュールを合わせにくいということは考えにくいと言えます。
女性歯科医師の働き方の現状
女性歯科医師はキャリアを重ねるのが大変であると言われています。歯科医師になる年齢と妊娠・出産・子育ての適齢期が重なりやすいことが大きく、キャリアを重ねてようやく安定しだしたタイミングでライフイベントの変化が訪れることはよくあることです。
一方で、子育てを両立させようとしても、歯科医院の性質上、子供に何らかの事態が起きてしまっても途中で中抜けすることは難しく、不安な気持ちを抱えて診療せざるを得ない状況になることもあります。
歯科業界では、女性歯科医師の活躍をサポートする動きを強めており、歯科医院を含めてその取り組みに熱心になってきている状況です。以前と比べれば働き方という点で見ると改善されつつあります。それでもまだまだ不十分という声も聞かれます。
女性歯科医師と男性歯科医師の違いは?
結論から言いますと、女性歯科医師と男性歯科医師の違いはほとんどなく、性別の違いで技術に差が出るとは言えず、あくまでも個人差の範疇となります。男性歯科医師は育休をとるケースが多くないため、キャリアの積み重ねにおいて違いがある程度で、それ以外の違いはあまり見られません。
女性歯科医師の強みは、子供に対して安心感を与えられやすい点なので、その点においては女性歯科医師の方が上と言えます。この点を売りにする歯科医院も出てきており、女性が院長を務める歯科医院のホームページにおいて女性歯科医師の強みを存分に発揮するケースも見られます。
とはいえ、女性だからいい、男性だから悪いという事は一切なく、結局のところは自己研鑽など勉強量によって違いが生じると考えるべきでしょう。
まとめ
女性歯科医師が活躍する場が増加傾向にある中、経営者は女性歯科医師の利点を考慮した人選を検討する必要があるといえます。
女性が歯科医院を開業するケースも増えていくことが予想され、女性や子供、高齢者の患者が安心して通える歯科医院が街中に増えることを期待する人も多いはずです。