虫歯治療や歯周病治療、矯正治療などさまざまな場面で活躍するのが歯科医師です。1つの駅に歯科医院がいくつもある状況が珍しくない中で、年収にどのような影響を与えているのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では歯科医師の年収に着目し、初任給や平均月収、開業医と勤務医の差などを解説していきます。
目次
歯科医師の年収を知る前にどんな仕事をしているか解説
歯科医師の年収を知る前段階として、まず歯科医師がどのような仕事を行っているのか解説していきます。
歯の治療など
歯科医師の基本的な仕事は、歯の治療です。一般的なものでは虫歯や歯周病の治療、歯の矯正、インプラント治療などが該当します。また、親知らずを抜く治療では親知らずの周辺の骨を削ることも行います。
また、予防処置なども行うほか、学校や企業を回って歯の定期検診を行うケースもあり、幅広く行っているのが特徴的です。
審美歯科
審美歯科は、見た目の美しさを重視した治療のことです。保険が使えない素材を使った詰め物、被せ物、インプラントのほか、ホワイトニングなども該当します。
歯科医師が自ら営業マンとなって提案を行うこともあります。
歯科医師の年収について
ここからは歯科医師の年収について解説します。主に初任給や平均月収などをまとめています。
歯科医師の初任給
歯科医師の初任給はおおむね35~50万円ほどとされています。研修医を全うして働き始めた歯科医師が該当し、だいたい35~50万円のところでスタートします。
地域差がある一方で、同じスタートラインでありながら歯科医院によって初任給がかなり異なるケースもあるため、あくまでも目安です。
歯科医師の平均月収
歯科医師の平均月収はおよそ60万円ほどと初任給と比べれば、倍程度に増えます。初任給は30万円台ですが、経験を重ねればすぐに昇給が期待でき、一定のキャリアを重ねれば平均月収だけで60万円に到達します。
何回か浪人をしてから歯学部に入るケースもあるため、一概に年齢で判断はできませんが、月収などのピークを迎えるのは40代に入ってからで、特に50代になると、人によっては月収だけで100万円を超えるケースも出てきます。
歯科医師の平均年収
歯科医師の平均年収はおおむね800万円ほどとされています。平均月収60万円プラスボーナスを想定すると、おおよそ妥当な数字です。一方で、令和に入ってからは平均年収の数値は安定しておらず、800万円台の前半と後半を推移している状況にあります。
後程ご紹介する開業医と勤務医の差や歯科医院の数と人口減少など、様々な要因が想定でき、エリアによる差も考えられます。
歯科医師の年収で見る開業医と勤務医の差
同じ歯科医師でありながら、開業医か勤務医かで実は年収に大きな違いがみられます。ここからは開業医と勤務医における年収の差についてまとめました。
開業医の年収
開業医の年収はおよそ600~1,400万円ほどとされ、歯科医師全体の平均年収と比べれば低い状況にある歯科医師もいます。一方で開業医の場合は、どのエリアで開業したかによっても大きく変化し、エリアなどががっちりハマったところであれば年収1,000万円も十分に想定できるため、ピンキリです。
ただ年収が良くても、手放しで喜べない事情もあります。それが開業に至るまでの資金の問題です。多くの開業医は借金をする形で開業しており、その金額は数千万単位とされています。この返済を毎年行うため、年収では一定の年収を記録しても、手元に残るお金はそうでもないという状況が当面続くのです。
しかし、開業した歯科医院を法人化するなど、経営状況が向上していくと余裕が生まれやすくなるのも事実です。開業医は開業してからしばらくが勝負と言えます。
勤務医の年収
勤務医に関してはおおよそ700万円前後が平均年収とされ、開業医と比べれば若干少ないと言えます。ただし、開業医と違うのは開業費用のための借金がない状態であり、仮に開業に向けて貯金をするにしても、開業をする意味がないと判断すれば、その貯金は丸々資産となります。
借金返済分を考慮すれば、開業医も勤務医も手元に残るお金はそこまで大きくは変わりません。しかしながら、あくまでも借金返済などは目先のことであり、後々は開業した方がいいこともたくさんあります。ですので、年収だけを見て良し悪しを決めるのは得策とは言えないでしょう。
歯科医院を開業するために確保し続けたい歯科医師の年収
歯科医院を開業するために必要な資金は、少なくとも5,000万円ほどとされています。そのうち、診療台(ユニット)やレントゲンなどの医療機器だけで3,000万円程度がかかり、テナントの場合は内装や外装、賃料などで2,000万円ほどかかるため、何かしらのものを切り詰める必要があります。
これとは別に運転資金も必要なため、最終的には7,000万円ほどの資金が必要になると言われているのです。もちろん、全てをキャッシュで用意するのは大変なので、だいたい1,000~2,000万円を用意した上で残りは融資を受けるケースが目立ちます。
仮に1,000万円の自己資金をキャッシュで用意する場合、1年100万円であれば10年で到達します。貯金に回るのは収入の2割程度とされており、年収500万円で可能です。700万円の年収であれば140万円が理想的な貯金額となるので、7年ほどで到達する計算です。
一方で、大学の奨学金の返済を同時に行っているケースもあるため、700万円の年収があっても毎年100万円の貯金が精一杯ということも考えられます。いずれにしても、勤務医としての平均年収である700万円前後を確保し続けることが開業医に向けての最初のハードルと言えるでしょう。
年収が高い歯科医師の特徴
年収が高い歯科医師にはいくつかの特徴がみられます。ここからは年収が高い歯科医師の特徴についてご紹介します。
専門分野が多い
年収が高い歯科医師には専門分野をいくつも持つ人が少なくありません。この場合の「専門分野」には、一般的な歯科以外にも矯正歯科やインプラントを始めとする外科、小児歯科、歯科口腔外科があります。多くのジャンルに対応できれば、それだけ歯科医師としての価値は高く、歯科医院としても魅力のある場所となるでしょう。
また多くの分野に精通していれば、自由診療も請け負いやすくなるため、結果として売り上げアップにつながります。年収が高い歯科医師はそれだけ多くのスキルを持っている人が多いと言えます。
自由診療に力を入れている
歯科医師は単に歯の治療を行うだけが仕事ではありません。審美的要素で治療を行うこともあります。例えば、全ての歯を白くするホワイトニングや、歯並びを良くする矯正治療、さらに銀歯を白いセラミックの歯に入れ替えるなどです。これら審美に力を入れるのも歯科医師の仕事であり、自由診療の存在こそが歯科医師の年収に直結する要素です。
自由診療は歯科医師のスキルが問われやすいため、言い値で対応しても決して高すぎるとは言えないほか、安ければなんでもいいと断言できないジャンルでもあります。
しっかりと稼ぐ歯科医院の多くは自由診療に力を入れています。保険診療だけでは限度がある分、自由診療に力を入れることは年収に大きくかかわる要素です。
副業を行っている
年収が高い歯科医師の中には副業を行っているケースが存在します。別の歯科医院で非常勤として働くケースもあれば、歯科医師としての肩書きを利用して書籍やブログなどで稼ぐケースなどです。
特に歯科医師としての肩書きを利用して書籍やブログなどで稼ぐケースは、歯科医師としての信憑性があるため、ネットのコンテンツとして良質なものになりやすいです。本当に執筆している人もいれば、監修という形で携わる人もいます。
歯科医師としての活動を幅広く行う中で、講演に呼ばれることもあります。単に歯科医院で稼ぐ以外の選択肢も意外と多くあるのが歯科医師です。
歯科医師の年収における男女の違い
歯科衛生士は女性がほとんどを占めていますが、歯科医師は男性が中心です。ただ最近は女性の歯科医師も増えてきています。男女でみる歯科医師の年収の違いについてまとめました。
女性の方が年収は低くなりやすい時代は終わった
平均年収で比較すると、これまでは女性の方が年収は低くなりやすい傾向にありました。これは一定のキャリアを重ねたのちに結婚や出産、育児などのライフイベントがあるため、歯科医師としてのキャリアが中断する時期があるからです。一旦退職をすれば、再び年収を下げてから歯科医師としてのキャリアを再開する必要がありました。
近年になり、女性の歯科医師が増えたことで、ライフイベントが一定数生じたとしても、女性の歯科医師の絶対数が増えた分、今までと比べれば女性の方がやたらと年収が下がりやすくなるデータではなくなりつつあります。
また、女性が社会で活躍しやすい世の中にしていく動きは強まっており、女性が働きやすい環境が整えられつつあります。退職せずに休職する形で一旦休み、同じ給与体系で復職でき、そこから年収アップが行えるケースが見られるようになりました。
まとめ
歯科医師の年収は世間的に見ればかなり高い部類ですが、開業医になるために自己資金を確保し、借金を行うとその年収でも足りないと感じる人はいるかもしれません。奨学金の兼ね合いなどもあり、もっと稼ぎたいと考えて一生懸命頑張る歯科医師もいます。
歯科医院自体がかなり増えており、人口減少社会において歯科医師の仕事は盤石とは言えません。だからこそ、年収アップのためには歯科医師としてのスキルアップなどが欠かせなくなります。