歯の治療において、歯科医師の助手的な存在であり、歯のメンテナンスをするにあたって貴重な存在となるのが歯科衛生士です。一方で、歯科衛生士はいくらぐらいの年収なのか、給料が気になる方も多いはずです。
本記事では歯科衛生士の給料にスポットを当て、歯科衛生士の給料相場や給料アップの方法などを解説していきます。
目次
歯科衛生士の給料を知る前にどんな仕事なのかを解説
歯科衛生士の給料を知る前に、まず歯科衛生士とはどのような仕事を行うのかについて解説します。
歯科衛生士の仕事
歯科衛生士は歯科医師の指示を受けてから、歯に関する疾病の予防処置や歯周病の治療、歯科医師のアシストなどを行う仕事です。例えば、歯石を取り除いたり、歯周病の状況を確かめたりする専門的な検査を行うのが歯科衛生士の仕事になります。
また、磨き残しなどが顕著であれば、正しい歯ブラシのやり方を指導するなど、予防歯科における大事な役割を担っています。
一方で、虫歯治療を歯科医師が行う際のアシスタントとして働くことこともあり、歯科衛生士なしでは歯科医院は回らないのが実情です。
歯科衛生士は国家資格
歯科衛生士はすぐに誰でもなれるものではありません。歯科衛生士は国家資格であり、高卒の資格を得た後に専門学校や大学で学んだ人に受験資格が与えられます。国家試験自体は決して難しいとはいえず、合格率は9割以上です。いわば学校で真剣に学んでさえいれば、基本的には受かりやすい資格です。
歯科衛生士になるには3年ないし4年コースのカリキュラムを受ける必要があり、夜間コースも存在しています。そのため、手に職をつけようと歯科衛生士を目指す人も少なくありません。
歯科衛生士の給料相場について
ここからは歯科衛生士の給料相場を中心に、初任給や平均月収などを解説していきます。
歯科衛生士の給料での初任給
歯科衛生士の初任給は正社員で働く人とパート・アルバイトで働く人で異なります。正社員で働く人の場合には25万円前後が初任給となります。給料の内訳として基本給と歯科衛生士手当、諸手当という形に分けられ、基本給そのものは20万円を下回り、手当で大きく補填するような仕組みにしている歯科医院もあります。
パート・アルバイトの場合には時給1,500円前後が相場で、経験者程時給が上がっていくような形になります。他業種の時給相場と比較しても、2割ほど高い状況です。歯科衛生士は国家資格であり、誰でも務まる仕事ではないからこそ、正社員やパート・アルバイトに関係なく、初任給は高めです。
歯科衛生士の給料での平均月収
歯科衛生士の平均月収は、28万円前後となっていますが、都道府県で差がついており、注意が必要です。例えば、東京都や神奈川県、福岡県になると平均月収が30万円を超えています。しかし、地方都市では平均月収が25万円を下回るケースがあるため、エリアによってだいぶ異なるのが実情です。
歯科医院によってはインプラントや矯正治療など自由診療に力を入れるところもあれば、保険治療を中心としたところもあります。都市部であればあるほど、ホワイトニングやマウスピース矯正など審美治療に力を入れる傾向が強く、対応できる歯科衛生士の給与は好条件になります。
歯科衛生士の給料での平均年収
平均月収に関してはおおよそ28万円前後となっていましたが、平均年収に関してはおおよそ380万円前後となっています。こちらも地域差が激しく、東京や神奈川だと平均年収だけで500万円に迫る勢いを見せる一方、地方都市になると300万円前後にとどまるなど、平均年収の上下だけで200万円ほどの差があります。
歯科衛生士は介護施設など、歯科医院以外でも勤務ができます。しかし、介護施設での口腔ケアを中心とした仕事だと給料はそこまで高くはなりません。
歯科衛生士の年齢別の給料
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」では、20代前半で初任給の25万円前後で、平均月収が30万円を超えるのはおおむね40代からとなっています。年収相場では20代前半でも300万円を超える年収になりやすく、30代後半になると400万円前後まで増えます。40代前半では450万円を大きく超える状況です。
30代後半と40代前半で大きく異なるのは、各種手当の存在が大きいとされ、役職手当が上乗せされたことで50万円以上の違いにつながったと言えます。同時に30代では結婚・出産・育児などのライフイベントが起こりやすく、このライフイベントで退職や休職が生じ、本来はもっと稼げる人もお休みするために押し下がったケースも考えられます。
年齢を重ねても、給料が頭打ちになるわけではなく、ライフイベントの影響が出やすいと言えるでしょう。裏を返せば、国家資格である歯科衛生士は一旦休んでも、再び復帰することが可能な仕事です。
歯科衛生士の勤続年数による給料の変化
歯科衛生士に限ったことではありませんが、勤続年数が経てば経つほど給料は次第に増えやすくなります。職場によっては、勤続年数に連動した昇給のルールが整備されており、実績を重ねていく中で給料が増えていくことは十分にある話です。
これはパート・アルバイトにも言える話であり、勤続年数が長ければそれだけ年収も増えやすいです。一方で、途中で辞めてしまうと勤続年数による給料の伸びをリセットすることになるため、結婚・出産などで一時的に仕事を中断する際には休職の形にして、すぐに復帰するなどの対策も必要になります。
歯科衛生士における給料アップの方法
歯科衛生士として給料アップを目指すには主に5つの方法が存在します。ここからは給料アップが行える5つの方法について解説します。
認定歯科衛生士になる
歯科衛生士とは別に、認定歯科衛生士という資格があります。認定歯科衛生士は一定の経験を重ねることで資格を得られるほか、特定の分野に特化した歯科衛生士として活動できるのが特徴です。例えば、歯科衛生士と並行して、5年以上歯周病に関係する仕事を行い、一定の研修などを重ねると日本歯周病学会認定歯科衛生士の認定を受けられます。
いわば歯科衛生士のスペシャリストという扱いになるほか、認定歯科衛生士自体が意外と少ないため、転職をする際に確かな武器となるだけでなく、一定の年収確保がしやすくなるのが魅力です。歯科医院としても認定歯科衛生士がいることそのものが歯科医院の魅力アップにつながるため、重宝されやすくなります。
別の資格を得る
歯科衛生士とは別に資格を得ることも年収アップに必要なことです。認定歯科衛生士とは別に、例えばホワイトニングに関する資格を得るのも1つの手です。近年、歯科医院でもホワイトニングに力を入れるところが多く、歯科衛生士とセットで持っていることで、貴重な戦力となり得ます。
また、糖尿病と歯周病に関連性があるため、糖尿病療養指導士の資格を持つことで糖尿病と歯周病それぞれの観点から指導が行えます。認定歯科衛生士と同様、いくつも資格を持つ歯科衛生士の存在は歯科医院としては頼りになることは確かであり、年収アップにつながるでしょう。
給料の高いところへ転職する
複数の資格を持っていても、歯科医院によっては評価されないケースがあります。その場合は転職を行い、給料の高いところを探すのがおすすめです。歯科衛生士自体は一定数いますが、いくつも資格を持つ歯科衛生士となると話は別です。
審美歯科などインプラントやホワイトニングに力を入れたい歯科医院にとっては、多彩な資格を持つ歯科衛生士の存在はとてつもなく大きい存在です。その分、希少価値もあるため、好条件で仕事を見つけやすくなります。
出世を目指す
同じ歯科医院で勤務する中で、出世によって年収を上げるケースも十分に考えられます。チーフや主任になり、何かしらの手当がつけば、その分だけ年収アップになり、特に資格を取得しなくても問題ありません。
役職手当のようなものが、月2万円でもあれば年間で24万円になります。これとは別に勤続年数に応じた年収アップを実現させていけば、1年で一気に年収を上げることも可能です。
正社員になる
パート・アルバイトの場合には正社員を目指すのが確実です。パート・アルバイトの身分でフルタイム勤務をしても、正社員と比べると給料面でも若干劣るほか、ボーナスが支給されなかったり、昇給の対象外になるケースもあります。
正社員と違わない働きぶりをしているのであれば、正社員を目指すのがおすすめです。特に一時的に退職してから復帰をする場合、一時的にパート・アルバイトで働いてから正社員を目指すのもいいでしょう。
歯科衛生士の給料と他職種との比較
歯科衛生士と近い仕事に歯科助手がいます。ここからは歯科衛生士と歯科助手の違いについて解説していきます。
歯科助手との比較
そもそも歯科助手とは、歯科医院で診療補助業務やクリーンルームでのお掃除、受付で電話応対、会計などを行う人です。歯科衛生士との大きな違いは医療行為の有無です。歯石を取るなどのことを歯科衛生士はできますが、歯科助手はできません。歯科衛生士自身は歯科助手の仕事もこなせるため、歯科助手と歯科衛生士の大きな違いは医療行為の有無と言えます。
この医療行為の有無は年収に大きな影響を与えており、歯科助手は初任給で20万円ほど、平均月収でも25万円ほどと1か月で3～5万円の差があると言われています。年収にすれば60万円ほどで、医療行為の有無が大きな差となっていることが言えるでしょう。
まとめ
歯科衛生士は歯科医院運営において無くてはならない存在です。仕事としての重要性は高く、貴重な戦力となり得ます。その分、年収も高くなりやすいですが、働く場所によって年収に大きな違いが生じやすくなることも事実です。
歯科衛生士の資格を得て仕事をし続けるほか、特定分野に特化して勉強を重ねて認定歯科衛生士の資格を得るなどして武器をいくつも持っておくと、歯科衛生士として十分な収入が得られやすくなるでしょう。
