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2024.09.07

  • コラム

歯科医師不足の時代がくるのは2025年以降?そう言われる背景や歯科医師不足に備えた採用対策について解説

歯科医 不足の時代がくる

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

都市部の駅を利用する方の中には、駅の周辺に複数の歯科医院があることを認識している方もいるのではないでしょうか。歯科医院の数はコンビニの数よりも多いとされており、飽和状態と言えます。一方、歯科医師に関しては今後不足する時代が訪れるのではないかと指摘する声が上がっています。

本記事では、歯科医師不足の時代が来ると言われる背景や歯科医師不足の時代が来ることで生じる問題などをまとめました。

歯科医師不足の時代が来ると言われる背景

歯科医 不足の時代がくる

なぜ歯科医師不足の時代が来ると言われているのか、本項目ではその背景・理由を紹介します。

歯科医師の高齢化

歯科医師は令和4年末時点で105,267人と2年前と比べると2,000人程度減っています。年齢別でみると、最も多いのが60代で23,566人、次に50代で22,398人です。ちなみに70代以上は12,833人なので、50代以上の歯科医師はおよそ6万人と歯科医師の半数以上を占めています。

参照:厚生労働省

一方、20代の歯科医師は5,963人、30代は16,942人と少なく、10年後20年後を考えると心もとない状況です。歯科医師が全体的に高齢化し、なり手が不足していることが問題と言えます。

歯科医師国家試験の難化

歯科医 不足の時代がくる

なり手が不足している背景には、歯科医師の国家試験が難しいことが原因ではないかと指摘する声があります。以前は歯科医師の国家試験の合格率は8割程度ありましたが、現在は6割台に落ち込んでおり、明らかに難化している状況です。

難化した理由はさまざまですが、歯科に関する知識だけでなく、在宅医療など本来なら歯科医師になってから学んでもよさそうな知識を国家試験の段階で問うことも考えられます。そして、ここ10年は合格者を2,000人前後にしていることも要因と言えるでしょう。

高齢化社会で需要が急増する可能性が高い

日本では超高齢社会に突入し、全人口のうち65歳以上が占める割合が20%を超え、今後も割合が増えていくことが予想されます。そして超高齢社会に伴い、歯科に対するニーズが高まると言われているのです。

厚生労働省の調査によると、要介護認定を受けた高齢者のうち64.3%に歯科治療が必要であると判断されました。しかし、歯科医院で治療を受けたのはわずか2.4%と非常に少ないのが実情です。

参照:厚生労働省

要介護認定を受けると歯科医院に通うのが大変なため、歯科訪問診療が必要となることも理由とされています。歯科訪問診療のニーズは年々高まっていく中で、訪問診療を担える歯科医師が減ってしまうという状況も考えられるでしょう。

歯科医師不足の時代は過去にもあった

歯科医 不足の時代がくる

歯科医師不足が叫ばれたのは実は令和の時代だけではありません。実は昭和の時代にも歯科医師不足の時代がありました。

人口10万人当たりの歯科医師数が30名だった時代

現在人口10万人当たりの歯科医師数はおよそ80名ほどですが、昭和40年代はわずか30名明らかに歯科医師が不足している状況でした。

将来的に人口10万人当たりの歯科医師数を50名にすることを目標に、全国各地で歯科大学や歯学部が新設されていきました。その結果、歯科医師は急増し、歯科医師が飽和する状況を生み出したのです。

歯科医師飽和の時代に行った対策

歯科医 不足の時代がくる

昭和の終わりになると、歯科医師があまりにも多くなったことで、歯科医師を減らしていくべきだという声が上がります。そこで、当時の文部省は歯学部や歯科大学の入学定員の削減目標を示すなど、歯科医師の数を減らす対策をとってきました。

昭和40年代・50年代の時期に歯科医師になった世代が60代以降の歯科医師であり、現状でも60代の歯科医師が多いのは当時の施策の影響が大きいと言えます。

合格者数を2,000人程度に抑制したことで、今度は歯科医師不足が叫ばれるようになったという流れがあります。

歯科医師不足の時代が来ることで生じる問題

歯科医 不足の時代がくる

ここからは歯科医師不足の時代が来ることで生じる問題について解説します。

後継者が見つからない

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歯科医師不足に陥ると、歯科医院を引き継いでくれる後継者も見つかりにくくなります。後継者がいないと、高齢の歯科医師が1人で歯科医院を切り盛りすることになり、診療できる患者の数が限られます。すると、経営規模も大きくできず、経営が不安定になる恐れも出てくるでしょう。

何より、後継者がいないことで、高齢の歯科医師が倒れた時、休診せざるを得ず、治療中の患者に悪影響が出ます。歯科医師不足は由々しき事態に陥りやすいことが言えるでしょう。

地域格差が生じる

歯科医師不足を指摘する声がある一方、地域によっては歯科医師不足ではなく、むしろ「歯科医師過剰」の状態にあるエリアも存在します。現状でも歯科医師の数に関して地域格差が生じており、既に歯科医師不足の状態になっているケースも見受けられます。

今後都市部で歯科医師不足となった場合、地方都市では、さらに歯科医師が減少することは明らかです。その場合、歯科医院での治療すら受けにくい状態になりかねず、大変な事態になってもおかしくありません。

歯科医師が不足している都道府県

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令和4年末における都道府県別の人口10万人当たりの歯科医師数を見ると、100人を超えていたのは東京・徳島・福岡でした。一方、全国平均の81.6人を超えていたのは10都府県に限られ、大半の道県は平均に達していませんでした。60人を割っていたのは、青森・富山・福井・滋賀・島根・沖縄です。

政令指定都市別では、東京23区で133.7人と明らかに歯科医師が多く、100人オーバーの地域が多く存在しました。地方にある政令指定都市でも100人を超えるところが少なくないため、地方の政令指定都市に足を運んで歯科治療を受けるような状況も今後は考えられます。

参照:厚生労働省

歯科医師不足の時代に備えた採用に関する対策

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今後歯科医師不足の時代になっても慌てることがないように、本項目では今から始めたい採用に関する対策について解説します。

人材紹介サービスの活用

最近になり、歯科医師や歯科衛生士など歯科業界に特化した職業紹介サービスがスタートするなど、人材紹介サービスの活用が有力です。転職を希望する歯科医師に選んでもらうために、プロのアドバイスをもらいながら魅力をどんどん伝えていくことで有望な人材を確保しやすくなります。

人材紹介サービスに登録しておくと、魅力的な条件ならば問い合わせが来る可能性は高いでしょう。仕事に専念したい歯科医院の院長にとって頼りになる存在です。

歯科コンサルタントサービスの活用

歯科医 不足の時代がくる

採用活動がうまくいかないと悩んでいる歯科医院の院長もいるはずです。この場合は歯科コンサルタントサービスの活用をおすすめします。歯科コンサルタントサービスであれば、採用に関してプロが一手に担い、歯科医院に見合った人材を見つけて、採用までこぎ着けてくれます。

歯科コンサルタントサービスでは、歯科医師が勤務し始める前と勤務し始めた後のフォローも行ってくれるので、早期離職を防げます。歯科医師に限らず、歯科衛生士の確保も可能なので、人手不足に困ることなく、活用可能です。

歯科医師不足の時代はいつから始まる?

歯科医 不足の時代がくる

歯科医師不足は2025年には始まるのではないかと言われていますが、少なくとも2030年までは歯科医師は増加傾向にあると指摘されています。歯科医師の高齢化はありながらも、70代以上の歯科医師が現役で頑張り続ける限りは、減りにくい状況と言えるでしょう。

2025年から歯科医師が減少していくという説は、日本歯科大学協会で常務理事を務める櫻井薫氏へのインタビューで出されたものです。インタビューの中で櫻井氏は、OECD加盟国の中で38か国中19位と平均的で、歯科医師が存在しない「歯科医師療過疎地区」が全国で1,200も存在していることを指摘しています。

櫻井氏が歯科医師が減少すると主張する根拠として挙げているのは、歯科医院の9割は後継者が決まっていないほか、開業医の半数程度は60歳以上であることなどです。

歯科医師数を巡って、日本歯科医師会は2032年になっても歯科医師の数は過剰な状況にあると予測しており、国家試験の合格者を1,500名程度にするべきという検討を行っています。歯科医師は不足しているのか、それとも過剰なのか、立場によってその考えは異なっている状態です。

参照:厚生労働省

まとめ

歯科医師が足りなくなるかどうかは、今後の状況次第と言えます。しかし、歯科医師の高齢化や要介護認定を受けた高齢者に対する治療の問題など、取り組むべきことが多いのも事実です。不足し始めてから再び歯科医師の国家試験における合格者を増やし始めても、満たされるまでに時間がかかります。

今後ニーズがどのように変化していくのか、地方部ではどのような動きがみられるのか、常に観察し続ける必要があるでしょう。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者