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2024.09.07

  • コラム

医療のICT化とは?必要性や求められる理由、メリットと現状の課題、導入フローから活用事例まで解説!

ICTとは 医療

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

どの業界においてもICT化が進んでおり、もはやICTなしには成立しない業種も少なくありません。医療の世界においてもICT化が進んでいます。一方で、医療のICT化とはどういうものなのか、気になる方もいるはずです。

本記事では医療のICT化とは何かについてスポットを当て、医療のICT化の必要性や求められる理由などを解説していきます。

医療のICT化とは何か

ICTとは 医療

そもそも医療のICT化とはどういうことなのか、医療のICT化に関する基本的な情報をまとめました。

医療のICT化の概要

そもそもICTは「Information and Communication Technology」の略称であり、日本語では「情報伝達技術」を指します。インターネットなどを活用してコミュニケーションを図っていくような技術等を示しており、メールやSNSなどを活用してコミュニケーションを図る技術も情報伝達技術の1つと言えるでしょう。

医療のICT化は文字通り医療分野においてICT化を図っていくことがポイントになります。ICT化によってより利便性の高い環境を目指していくことが医療のICT化の狙いと言えます。

医療のICT化の必要性とは

ICTとは 医療

ここからは医療のICT化の必要性について解説していきます。

医療従事者の不足を補う必要がある

ICT化はインターネット等の活用がベースとなるため、効率的な運用がしやすくなります。日々の業務が効率的になることで、医療従事者が多少人手不足であっても、対応しやすくなるのです。

医療従事者が足りない状況はコロナ禍などであらわになり、大勢の患者を少ない医療従事者で回すことも珍しくありません。しかも、給料面で納得のいく水準にならないため、ストライキを起こす医療従事者の姿も多くなっています。

今まで以上に効率的な運用が求められる状況となっており、そのためにも医療のICT化が欠かせない状況にあります。今後人手不足が解消される可能性は考えにくく、常に人手不足の対応が欠かせないため、医療のICT化で対応せざるを得ない側面もあるでしょう。

医療費抑制の必要がある

ICTとは 医療

日本は国民皆保険制度があり、基本的に保険料で私たちの健康保険が賄われています。しかしながら、少子高齢化の影響で全体の保険料は次第に少なくなり、一方で医療費は増えやすくなります。収入が減り、支出が増える状況は赤字を意味しており、決して健全とは言えません。

この場合、医療費の抑制を迫られるのは当然の流れと言えます。では、どのように医療費の抑制を目指すのかという点が重要です。例えば、電子カルテがあり、どの病院でも利用できるようになれば、同じ病気で複数の病院を掛け持ちすることを避けられます。新しいところで診察をしてもらうだけでムダな医療費が発生するので、それを削れるでしょう。

医療のICT化が求められる理由とは

ICTとは 医療

医療のICT化が求められる理由には色々なものが挙げられます。例えば、オンライン診療などができるようになれば、患者は自宅に居ながら診察を受けられ、薬を出してもらえます。通院の手間暇などが削れるほか、他者への感染リスクを抑制できるでしょう。このように医療のICT化は患者にとって利便性を高めることにつながります

電子カルテやレセコンなどがあれば、医療事務としての仕事の負担も軽減されやすいなど、業務効率は高まるでしょう。業務効率が高まれば、その分、ムダがなくなり、利益を残しやすくなるほか、賃上げにもつなげやすくなります。

また、健康に関連したアプリを積極的に活用することで、より健康管理がしやすくなり、健康に対する意識も高められます。医療のICT化を目指すことは病院・クリニックの運営側、医療従事者、患者、そして、保険組合などそれぞれの立場から見てもプラスなことが多いのです。

医療のICT化のメリットとは

ICTとは 医療

ここからは医療のICT化のメリットについて解説していきます。

情報共有がしやすくなる

医療のICT化によって、今まではアナログで作られてきた情報がデジタルで作れるようになるため、情報共有のスピードが早まることになります。欲しい情報がすぐに共有でき、連携もスムーズに行える分、最終的な判断も早まっていくのもメリットの1つです。

一方で、電子カルテなどを見れば、その患者の状況が一目でわかるだけでなく、同じ情報を別の病院でも共有できる形になれば、治療に不満があって転院してきた患者がいてもすぐに最適な方針を定めて治療を進められます。

オンライン診療などがしやすくなる

ICTとは 医療

近年はオンライン診療が行いやすい環境が整えられており、遠隔地における医療も整備されています。医療のICT化によって限界集落などの遠隔地においても、医療サービスを受けやすくなってきたのが大きなメリットと言えます。

医療のICT化が進む前は直接医師などに来てもらうしか状況を判断する方法がありませんでしたが、医療のICT化によってオンライン上で行えるようになっています。遠隔地にいた状態でも適切な医療を受けられるのが魅力的です。

データの活用がしやすくなる

医療のICT化によって、医療のデータが集めやすく活用しやすくなったのが大きな要素と言えます。患者がどのような症状を訴えて、どのような診断結果、数値になっているかなどが可視化され、治療の推移などもチェックできます。

また、特定の方法を行えば改善が進むとわかれば、その方法に関する研究も進められるようになるでしょう。効果的に治療を進めていくことを考えた際に医療のICT化を全国的に進めていくことが大切です。

医療のICT化における現状の課題とは

ICTとは 医療

ここからは医療のICT化における現状の課題について解説していきます。

普及スピードが早まらない

医療のICT化においてまず普及していかなければならないのが電子カルテです。医療のICT化の中核を担うと言っても過言ではありませんが、現状だと電子カルテの普及率はまだまだ低いのが実情です。

特に小規模の病院・クリニックほど電子カルテの普及率がそこまで高まっておらず、情報共有に向けたスピードは早まらない状況と言えます。政府からの補助金など普及スピードを早めていくようなやり方をとっていくことが求められます。

格差が出やすい

ICTとは 医療

医療のICT化がとても大事な施策であることは多くの病院・クリニックが感じていることです。しかし、医療のICT化が重要だとわかっていても、資金面などもあって、なかなか切り替えられない医療機関が多いのも事実です。

一方で、順調に切り替えが進んでいる医療機関も目立ちます。結果として、医療のICT化に関する格差が出やすくなっており、その点においていかに格差をなくすか、普及を進めていくかが問われやすい状況です。

セキュリティ対策の問題

医療のICT化において、すぐに対応しなければならないのがセキュリティ対策です。重要な情報をネットワークでやり取りする以上、ハッキングの可能性は常に考えなければなりません。万が一患者の情報が漏れてしまったら最悪の事態です。

今までは紙のカルテでやり取りしていた分、ハッキングや個人情報の漏洩は考えにくく、内部の人間の問題が大きかったのですが、ハッキングは外部の人間の悪意によって起こりうるため、注意が必要です。しかも、漏洩すれば病院・クリニック側に責任があるため、セキュリティレベルを高めていくことが求められます。

医療のICT化の導入フローとは

ICTとは 医療

ここからは医療のICT化を進めていく上での導入フローについて解説します。

医療のICT化のニーズをつかんで計画を立てる

医療のICT化を進めていく中で、そもそも医療のICT化に関するニーズがあるのかを判断する必要があります。現状の課題などを踏まえた上で、初期投資を行っても問題がないかを確認し、医療のICT化に向けた計画を立てていきます。

計画を立てたら、医療のICT化に向けて何を導入していくかを決めていくことになります。実際に医療のICT化を担っていくのは現場のスタッフなので、現場と連携しながら医療のICT化を進めていくことになります。

具体的な日程を決めていく

ICTとは 医療

医療のICT化を進めていく中で具体的な日程を決めていくことも大事です。例えば電子カルテにする場合、紙のカルテから電子カルテへ移行する際にどれだけの時間で行うのか、どの規模で最初は行っていくのかを計画を立ててから日程の調整を行っていくことになります。

データを移行させていく作業はとても大事であり、ミスは許されません。できれば余裕のある計画、日程の上で行った方が確実です。そのためにも早めに計画を立案して実行していくことが求められるでしょう。

教育などを行っていく

医療のICT化において、重要なのは実際に活用していく現場スタッフ、医療従事者たちの教育です。現場スタッフが使いこなせない限り、医療のICT化は絵に描いた餅になってしまいます。そうならないためには、研修を重ねていくことが欠かせません。

そして、導入してからも改善点を見つけていき、運用方法の見直しを進めていくことが求められます。これらのことを地道に重ねていく中で、医療のICT化が実現するのです。

医療のICT化の活用事例とは

ICTとは 医療

医療のICT化の活用事例で最も一般的なものは電子カルテです。カルテの電子化により、情報共有が進みやすく、管理もしやすくなります。また、レセコンと連携させることで、レセプト作成がしやすくなり、医療事務などの手間がかなり省けるでしょう。

また、電子カルテを共有できる状態にすれば、患者に関する情報が共有しやすくなります。患者にとっても医療従事者にとってもプラスがあるのが電子カルテです。

他にもオンライン診療や遠隔地から患者の状況を観察する場合にも医療のICT化が欠かせません。万が一体調が急変してもすぐにチェックでき、適切な対応がとれるようになるでしょう。

まとめ

医療のICT化は、今後の医療を考えていく中で絶対に不可欠です。例えば、歯科医院の場合、転院してきた患者がいるとして、どのような治療によって今があるのかなどの情報を知った上で治療に臨める歯科医師は少ないのが実情です。カルテを患者が持ってくるわけではないため、実際にチェックしないとすぐには判断できないものです。

これが医療のICT化によって、電子カルテで共有できるようになれば、さまざまな対応がしやすくなります。その点においても、医療のICT化は関係者全員の利便性を高め、効率的な治療につながるという点で大事なのです。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者