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2024.09.07

  • コラム

歯科医院を開業するための手続きとは?成功のコツや収益の目安、開業のメリットについて徹底解説

歯科医院 開業

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

歯科医師となった人であれば誰しもが夢見るのが自らの歯科医院を開業することです。自分自身の治療方針を最大限実現できるほか、年収も大幅アップが見込めるなど、歯科医院の開業には夢があります。一方で、開業に向けてやるべきこともたくさんあるのが実情です。

本記事では歯科医院の開業を中心に、開業に向けた手続きや開業のメリット・デメリット、成功させるコツなどをまとめました。

歯科医院開業のメリット

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まずは歯科医院開業のメリットについて紹介します。

年収を高められる

歯科医院の開業における最大のメリットは、年収のアップです。開業医と勤務医では、年収の差が2倍以上あるとされ、開業医になれば、勤務医時代と比べると倍以上の年収になる可能性が出てきます。

もちろん、開業すれば誰しもが年収を倍以上にできるわけではなく、経営努力などは欠かせません。経営の努力を重ねていくことで勤務医時代よりも大きく稼ぐことは可能であり、努力のし甲斐があるのも開業のメリットと言えます。

自分が理想とする治療方針で経営できる

歯科医院 開業

もう1つ大きなメリットは、自分で治療方針・診療方針を決められる点です。勤務医時代は、やりたいことがあっても勤務する歯科医院に従わざるを得ませんでしたが、開業医となれば、自分のやりたいようにできます。

例えば、今までは訪問診療をやりたくても、勤務していた歯科医院の事情でできなかった場合があったとします。開業することにより、訪問診療が行えます。理想とする歯科医院を作り上げることができるため、地域に貢献しつつ収入も高めていくことが可能です。

好きな場所で開業できる

歯科医院を開業する場所は自由に選べます。勤務していたエリアで開業を目指すケースもあれば、地元に戻って開業するケース、あえて歯科医師が不足するエリアを選ぶケースなど、さまざまな選択肢が可能です。

開業する場所を選ぶ際には、商圏等を踏まえて時間をかけて選んでいくことになります。自分が開業したい場所に自分の城と言える歯科医院を開業できるのは、まさに歯科医師の夢と言えるでしょう。

歯科医院開業のデメリット

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本項目では、歯科医院開業のデメリットについても解説します。

開業には初期費用がかかる

一番のデメリットは開業に初期費用がかかる点です。開業に必要な資金は初期段階で5,000万円以上とされています。そのため、勤務医時代から自己資金を確保していくほか、金融機関からの借入、親族や友人知人などからの借金など、さまざまな形で資金を確保する必要があります。

加えて、回転資金も必要となるため、経営者としての資質が問われるほか、収入が増えても借金返済に充てられるため、一時的に年収が下がるケースも出てくるでしょう。いかに資金を確保していけるかがカギを握ります。

患者対応だけに専念できない

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勤務医時代は目の前の患者にだけ目を向けて、治療に専念することが可能でした。しかし、開業医の場合、自らが経営者となるため、患者対応だけを行っていればいいわけではありません。

例えば、患者を集めるための活動や歯科衛生士・歯科助手への指導、金銭的な管理などやるべきことがたくさんあります。開業して間もない時期は家族と一緒に経営していくケースもあるため、慣れないことも多く、落ち着かない日々を過ごすことになるでしょう。歯科医師の仕事に一生懸命取り組みたい方には辛い時期があります。

すぐに年収がアップするとは限らない

歯科医院を開業すれば必ず年収がアップするとは限りません。年収をアップさせるには、一定以上の売り上げが必要であるとともに、経費などを差し引いても利益が残る形でなければならないからです。例えば、患者が集まらない、融資の返済が残っているなどの状況だと、年収は上がりません。

年収がアップするのは融資の返済などが終わってからで、患者が増えてくる中で次第に増えていくような形です。開業してすぐに年収が倍以上になる可能性は低く、着実に歩みを進めていくことが求められます。

歯科医院を開業するための手続き

歯科医院 開業

本項目では、歯科医院を開業するための手続きについてまとめました。

自治体・保健所で事前相談を行う

歯科医院を開業する際には、保健所に開設届などの書類を提出することになります。この書類に不備があると、開業を認めてもらえません。書類の不備を開業前に指摘してもらう、もしくは相談に乗ってもらうため、自治体もしくは保健所において事前相談を行う流れです。

事前相談を行うことで、書類の不備を回避でき、スムーズな申請が行えます。後から問題が生じて開業が遅れることがないようにするためにも、事前相談はやっておくべきです。

診療所開設届を提出する

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テナントとの契約など、歯科医院を開業する場所や施設に関連する手続きを終えたら、診療所開設届を提出します。診療所開設届は歯科医院の開業にはなくてはならない書類で、歯科医師免許の写しや臨床研修修了登録証の写しなども提出します。

この診療所開設届を提出してから、書類をチェックしながら検査を行っていきます。検査では書類の不備がないかを厳しくチェックし、合格することで「診療所開設届受理通知書」が渡されます。

社会保険の手続き

診療所開設届受理通知書は、社会保険の手続きを行うのに欠かせません。設立してからすぐに診療所開設届受理通知書等を提出して、社会保険の手続きを進めていきます。加入したらすぐに保険料の支払いが求められ、遅れてしまうと罰則の対象となるため、注意が必要です。

歯科医院の開業を成功させるコツ

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本項目では、歯科医院の開業を成功させるコツについて解説します。

事業計画の見通しを厳しく見積もっていく

歯科医院の開業で失敗するケースは事業計画の見通しが甘いケースで、特に資金面で甘い見通しになってしまうと、借金に頼らざるを得ない状態となり、返済に追われる日々を過ごすハメになります。

事業計画を立てる際に厳しめに見積もっていくことで、順調に経営が行えればその分利益につながりやすく、結果として成功に結び付きます。

リサーチを徹底して行う

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事業計画の見通しが甘いのも、結局のところ、リサーチが不足してしまうことが大きな要因です。例えば、駅の近くなら需要があると何も考えずに駅の近くで歯科医院を開業したとします。周辺にたくさんの歯科医院があった場合、多くのライバルを相手に経営を行うことを迫られるでしょう。

仮にリサーチを徹底していれば、ライバルが少ないエリアを狙えますし、少なくとも無計画に駅の近くで開業をする選択にはなりません。リサーチを徹底して行うことが、失敗の可能性を下げる要因となります。

自分事としてできる限り関与する

開業にあたり、コンサルタントに依頼して開業までのプロデュースやアドバイスをお願いするケースが考えられます。コンサルタントは経験が豊富なため、確かにその方がうまくいくかもしれません。しかし、あまりにもコンサルタントに任せすぎてしまうと、歯科医院の状況を把握できず、いざというときの決断ができなかったり、優柔不断になりがちです。

コンサルタントを頼ることも大切ですが、まずは自分事としてできる限り関与していく姿勢が求められます。その上でコンサルタントから話を聞いて学んでいくようにしていくと、コンサルタントがいなくても適切な判断ができるでしょう。

歯科医院の開業で目安にしたい収益

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過去の調査では、個人が経営する歯科医院の平均収益は年間で4,500万円程度とされているため、開業時の当面の目標収益は年間4,500万円となります。1日20人程度の患者を診ていくことで達成できる数字であり、自由診療を積極的に取り入れることで、収益を確保しやすくなるでしょう。

また歯科医院を開業するにあたって、医師や歯科医師のみに与えられた優遇税制があります。年間の保険収入が5,000万円より下だった場合に、経費を概算で計算できるというものです。本来は実費が経費の額面となりますが、優遇税制においては概算で請求できるため、実際よりも多額のお金を手元に残せます。

優遇税制の範囲内でまずは収益を検討していき、次第に規模を拡大していくような形が理想的と言えるでしょう。

歯科医院開業を目指すべき歯科医師の特徴

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歯科医院開業を目指すべき歯科医師に関しては、さまざまなパターンがあります。例えば、歯科医師としてもっと稼ぎたい場合には早急に歯科医院を開業し、今後医療法人化を目指していくのがおすすめです。また、自分が思う治療方針を貫きたい場合も歯科医院を開業するべきでしょう。

これらに共通するのは「昔の自分より今の自分、今の自分より未来の自分が成長していてほしい」という気持ちです。年収をアップさせたいという思いや、スキルを磨いて患者に対する治療の質を向上させたいという思いが根底にあることから、向上心が高い歯科医師程、歯科医院の開業に向いていると言えます。

一方で、勤務医として言われたことを淡々とこなす方が良いという人は、わざわざ歯科医院の開業を目指す必要はないでしょう。開業すると自分で決断しなければならないことが頻繁にあるため、勤務医の仕事を淡々とこなすだけでは務まりません。歯科医院の開業を行ってからやりたいことがたくさんある人は開業をおすすめします。

まとめ

歯科医院を開業するためには、さまざまなハードルをクリアしなければなりません。特に金銭面では、多額の借金を背負うことになりかねないため、勤務医の頃から自己資金を計画的に貯めていき、長いスパンで開業を検討していくのがおすすめです。両親が歯科医院を経営している場合には、両親の歯科医院を継ぐのも1つの手と言えます。

まずは長い時間をかけて事業計画を練ってみて、その上で資金繰りを考えていくことが大切です。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者