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2024.09.07

  • コラム

歯科医院でのクレームの発生要因とは?発生時の対応方法や早期解決に向けてのポイント、よくあるケースを解説

歯医者 クレーム

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

歯科医院ではさまざまなクレームが出てきます。歯科医院側が原因となるケースもあれば、患者側の一方的なクレームもあり、そのたびに歯科医院側は苦慮します。どのような対処法をしていくべきか、しっかりと対策を立てなければなりません。

本記事では、歯科医院でのクレームに着目し、クレーム発生時の対応方法や早期解決のポイントなどを解説します。

歯科医院でのクレームでよくあるケース

歯医者 クレーム

本項目では最初に、歯科医院でのクレームでよくあるケースをまとめました。

予約関連のクレーム

基本的に歯科医院では、予約制を導入しており、急患などがない限りは予約が最優先となります。しかし、治療の中身や急患、ちょっとしたロスタイムなども重なると、予約時間通りに治療が始まらないケースが出てきます。

予約した時間になっても呼ばれないことに、患者は怒り、クレームをつけることがあるのです。また、予約を取ったはずなのに取れていない、予約の時間を間違えていたなど、予約に関連するクレームは多く、その点も歯科医院側が苦慮しやすい部分と言えます。

治療費用に関するクレーム

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歯科医院のホームページでは、治療費用に関する明確な説明があまりなされず、おおよその費用が紹介されるケースがほとんどです。そのため、実際に治療を受けた後に値段を見て、「高い!」と感じる患者がクレームをつけることがあります。

また、自由診療では歯科医院の言い値で治療ができる分、「費用が高すぎる!」というクレームが出てしまうことがよくあります。保険診療や保険外診療いずれのケースでも出てくるクレームなので、注意が必要です。

治療期間に関するクレーム

虫歯や歯周病の治療は、人によっては相当な時間を要することがあります。何回も通院して治療を行うため、忙しい人からすれば、「あと何回で終わるんだ!」とイライラしてしまうこともあるでしょう。その際にクレームをつける人がいます。

治療期間に関しては、実際に治療を始めてみなければわからない部分も多く、詰め物を作るなどの作業を挟むと明確な治療期間を伝えるのは大変です。ゆえに治療期間を伝えられず、患者をイライラさせることがあります。

説明に関するクレーム

説明に関するクレームは起こりやすく、言った言わないの水掛け論的な展開になることも珍しくありません。患者側からすると、「そんなことは言われていない!」という気持ちになりやすく、歯科医院側からすれば「ちゃんと伝えたのに!」と思っていることがあります。

患者に対する説明は治療方法やリスクなど重要な話も多いため、言った言わないの水掛け論は本来あってはいけないことです。だからこそ、説明に関するクレームに対して、しっかりとした対処が求められます。

歯科医院におけるクレームの発生要因

歯医者 クレーム

本項目では、歯科医院におけるクレームの発生要因について解説します。

説明が足りない

治療に関するクレームなどでは、基本的に説明が足りないケースがほとんどです。歯科医院側からすれば「言ったはずなのに伝わっていない」というケースもあれば、「ホームページで説明しているはずなのに読んでくれない」と不満に感じることもあるでしょう。

しかし、すべての患者が歯科医師の言葉を一言一句聞き漏らさないわけではありませんし、ホームページを一言一句すべてに目を通すわけではありません。現状でも問題はないと説明を尽くす姿勢を怠ると、説明不足になりやすく、クレームにつながりやすいのです。

コミュニケーションが足りない

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患者とのコミュニケーションが不足すると、さまざまなトラブルにつながりやすくなります。説明不足につながることもあれば、待ち時間が長引いた際に患者をイライラさせてしまうこともあるでしょう。

逆にコミュニケーションをとっていけば、話を理解した上で待ってくれるかもしれません。コミュニケーションによってクレームを抑え込める一方、コミュニケーションが不足することでクレームを誘発する要因にもなり得ます。

配慮が足りない

予約しているのに急患から先に治療を始めたなど、順番を抜かされることに対し、多くの人は嫌がります。その際に一言でも謝っておく配慮があれば、結果的に抜かされる人も一定の理解を示すはずです。

配慮が足りないと、「自分は蔑ろにされた」と怒る人が出てきてしまいます。しっかりと配慮がなされているかもチェックする必要があるでしょう。

歯科医院でクレームが発生した際の対応方法

歯医者 クレーム

本項目では、歯科医院でクレームが発生した際の対応方法についてまとめています。

まずは謝る

例えば、順番を抜かされたことにクレームがあった場合、まず順番が前後したことに対する謝罪をします。いきなり理由を説明しても、「言い訳をするな!」と怒るだけです。

まずはしっかりと謝ることで、相手も「なぜこんなことになったんだ!」と原因を聞こうとします。その時に理由を話せば次の段階に入るでしょう。

感情的にならず聞き役に徹する

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クレームをつける人は基本的に感情的になっており、人によっては感情のコントロールが効いていない人もいます。その場合、どのような言葉も逆撫でさせるだけに終わり、何を言っても逆効果になることがあるのです。

そのため、クレーム対応をする際には感情的にならず、とにかく聞き役に徹することが求められます。相手も次第に落ち着くほか、しっかりと話を聞いてくれたことに満足感を得られるため、その後の対応がしやすくなるでしょう。相手の言うことにその都度反論をしていけば、相手はエスカレートするので、避けるべきです。

内容を記録して対処していく

クレームに関しては、どんなクレームなのかを記録していくことが欠かせません。その上で再発防止策を練って二度と同じようなことがないように対処していくことが求められます。

クレームをつける人の中には何回も同じような経験をして怒る人もいるので、再発防止を心がけることはとても大事なことです。

歯科医院でのクレームに関する対策内容

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本項目では、歯科医院でのクレームに関する対策内容をまとめています。

予約システムを導入して待ち時間をわかりやすくする

もともと時間予約をしている人がいる一方、急患として入ってくる人もいます。受付で働く歯科助手からすれば、時に混乱することもあるでしょう。そこで予約システムを導入することで、予約状況や待ち時間を管理でき、混乱を最小限にできます。

急患の人も待ち時間が分かるので、それに合わせて行動ができるほか、いつでも予約ができるため、利便性も高まります。待ち時間がわかれば、予定も立てやすくなり、予約関連のクレームを抑制できるでしょう。

できる限り明文化する

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ホームページで料金体系の紹介をする際、できる限り詳しく説明を行うほか、自由診療に関してはなるべく料金を詳しく紹介しておくことで、費用面の不安を解消していけます。書けるものはできる限り書いていくようにすれば、情報はそれだけ多くなります。

患者に渡す資料などもなるべく情報を記載することで、言った言わないの水掛け論に持ち込ませず、患者が確認していなかったように持っていけます。もちろん、資料を渡す際にはしっかりと見てほしい旨を伝えることも必要です。

コミュニケーションに関する研修を重ねる

コミュニケーション能力の問題でクレームを生じさせるケースもあることから、歯科医師・歯科衛生士・歯科助手がそれぞれコミュニケーションに関する研修を受けていくことが求められます。

相手に不快感を与えない話し方や聞き方があるため、例えば「ハキハキと喋る」、「文章は短めにする」などの対策を立てた上で研修を重ねていくことで、患者が納得のいきやすい形で説明が行えるようになるでしょう。

歯科医院でのクレームを早期解決させるポイント

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歯科医院におけるクレームを早期解決させるには、クレームをつけた患者をいかに怒らせないかが重要です。クレームをつける患者は「自分を蔑ろにされた」、「歯科医院のミスで損害を受けた」と考えていることが多く、「どうしてくれるんだ!」という気持ちでクレームをつける傾向にあります。

その中で、歯科衛生士・歯科助手が応対し、患者の話を遮るようなことをすれば、患者は逆上し、「院長を出せ!」と言い始めるでしょう。特に院長しか歯科医師がいない場合、治療はストップし、周囲の人たちを巻き込んでしまいます。

まずは患者の話をできる限り聞くほか、不快にさせたことを謝るといったことをこなすことが大切です。これらの対応をマニュアル化した上で定期的に研修を行うことも早期解決を目指す上で重要なことと言えます。

歯科医院のクレームは成長につながるチャンスでもある

歯医者 クレーム

クレームはすべて悪いものではなく、時に歯科医院の成長を促すようなものにもなります。何を改善しなければいけないかが可視化されるため、改善を図っていく中でよりよい状態を目指せるようになるのです。

また接遇面など、歯科衛生士・歯科助手のスキルアップ・キャリアアップにつながり、患者の満足度を高める結果につながることも考えられます。いずれにしても、クレームは悪いことばかりではなく、成長につながるチャンスとして前向きに受け取ることも必要です。

まとめ

クレームはできればない方がいいですが、改善点を患者から教わると考えると、クレームはある意味で必要なものと言えます。問題はクレームをつけられた際の対処法です。クレームをつけられることが迷惑であるというスタンスでは、重大なトラブルにつながるだけでなく、患者の満足度を下げて、経営に支障が出る可能性があります。

クレームには真摯に対応し、改善を図っていくことでよりよい状態を目指せるでしょう。まずは相手の話をできる限り聞いて誠意を示していくことが求められます。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者