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2024.10.30

  • コラム

歯科医院での医療DXとは?どう変わる?メリットや推進に際の課題、現状についてわかりやすく解説!

歯科 DX

Writer

髙橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

各業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、生産性向上などを図っています。医療業界でもDXの波は訪れており、歯科医院でもDXが導入され、歯科DXというものも出てきています。

本記事では、歯科医院での医療DXとは何かを中心に、DXに伴う変化や導入のメリット、推進時の課題などをまとめました。

歯科DXの概要と重要性

歯科 DX

歯科DXは、歯科医療や管理業務にデジタル技術を活用することで、歯科医院における業務効率化を目指します。

本項目では、歯科DXの詳しい概要や重要性をまとめました。

歯科業界におけるDX

そもそもDXは、AIやIoTといったデジタル技術を活用することで、製品・サービスの品質向上を図る意味合いがあります。歯科業界においては、まず業務効率化を図ることが歯科DXを行う意義と言えます。

日本で展開される医療DXは、事務的な手続きを迅速化するためのものが中心となっていますが、世界を見渡すと医療サービスの提供に用いられるケースもあるのが実情です。

AIを活用した糖尿病・がんの早期発見をはじめ、AIを活用して病気を早期に見つける動きも出てきています。日本は医療機関の事務手続きの段階でとどまっていますが、今後歯科業界においてもAIを活用した治療などが見られる可能性も出てくるでしょう。

日本における歯科DXの歴史

歯科 DX

日本で歯科DXが本格的になったのは、2014年からとされています。この時期にCAD/CAMを活用して歯の詰め物や被せ物を作ることに対して保険適用が認められ、DXの先駆けとなりました。

その後、DX推進について政府が推進するようになると、医療全体で活用する動きがみられるようになります。その一端がマイナンバーカードを活用した制度です。電子処方箋なども紙ではなくデータを活用していき、利便性を高めようとする動きにつながっています。

歯科DXを歯科医療に用いたケース

歯科 DX

歯科DXは、歯科医療においても積極的に用いられており、デジタル技術を使った治療の精度と効率も年々高まっています。

本項目では、最新の機器や技術についてまとめました。

歯科用3Dスキャナー

歯科用3Dスキャナーは口腔内を撮影し、3Dデータを得て歯型をスキャンしていくものです。歯型を入手するにはスライムのようなものを使って歯型を取るのが普通でしたが、歯科用3Dスキャナーがあれば、たった数分で、患者に負担をかけずにスキャンが終了します。

今までは人間の技量によって仕上がりが左右するケースもありましたが、最新技術の活用により、安定した品質で利用できるほか、データで残しやすくなったのも魅力的な要素です。

歯科用CAD/CAMシステム

歯科 DX

歯科用CAD/CAMシステムは、コンピューターを用いる形で歯の詰め物や被せ物を作るものです。歯科用3Dスキャナーを用いて作れるので、患者にフィットするものを短期間で作れるのが特徴的です。

歯の詰め物を作るまでに一定の時間がかかるほか、微調整に時間を要することも多々ありました。歯科用CAD/CAMシステムを活用すれば、その心配が軽減されます。患者に何度も通院させずに済むため、患者や歯科医院などにとってもメリットがある技術と言えます。

歯科DX導入で変わることは?

歯科 DX

全国の歯科医院で歯科DXが導入されることでどのような変化がもたらされるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

本項目では、歯科DX導入によって変化することについてまとめました。

情報の管理がしやすくなる

歯科DXの導入により、情報の管理がしやすくなるのが大きなポイントです。例えば、電子カルテがその一例と言えます。患者の診療情報を一元管理することで、迅速な情報共有を可能となります。

この情報共有は歯科医院内での情報共有に限らず、他の歯科医院へ転院する際にも活用が可能です。歯の治療歴をはじめ、今までの内容をすぐにチェックできるため、旅先で急に治療を余儀なくされた場合なども共有したカルテを見ながら処置が行えます。

将来的な予測がしやすくなる

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多くのデータが集まることで、将来的な予測がしやすくなります。例えば、歯垢・歯石の状態から虫歯や歯周病のリスクが将来的にどれくらいありそうなのかを数字で示せるようになれば、その数字を見た患者側はより危機感をもって対応できるようになるでしょう。

データを有効活用していけば、将来的なリスクや今後の方針などがよりクリアとなり、患者にマッチした治療が行えるようになります。現状ではまだその領域に到達していないものの、予防歯科にシフトしてきた現状では、こうした予測にニーズが生まれることも考えられます。

診断の支援が行われる

医療業界では、AIを活用して診断を支援するシステムが着々と導入されています。レントゲンなどの写真を見て、病気が隠れていないかをチェックしていくシステムです。

人間の目では早期発見が難しかったケースでも、AIが早期発見を行えるようになり、早期に治療を行って命を救うことが可能です。歯の治療においても、歯の状況をチェックするのに用いれば、早期発見につながり、結果としてムダな医療費を使わずに済みます。

歯科DXを導入することで得られる患者側・歯科医院側双方のメリット

歯科 DX

歯科DXを導入することは、歯科医院にとってもメリットがありますが、患者側にとっても十分なメリットがあります。

本項目では、患者側・歯科医院側双方のメリットをまとめました。

患者側のメリット

患者側のメリットは、他の病気との兼ね合いを気にしないで治療を受けられる点です。例えば、歯周病と糖尿病には密接な関係性があり、歯周病の治療を行うことで糖尿病が改善されるケースもあります。

DXを活用して電子カルテが導入されれば、こうした既往歴に関して、患者側が伝えなくてもカルテを見れば既往歴の情報がチェックできるため、より適切な治療を受けられます。

他にも会計でのスピーディーな対応など、患者側のメリットも多く存在しており、歯科DXの恩恵にあずかれる形です。

歯科医院側のメリット

歯科 DX

一方、歯科医院側のメリットは、オンラインでの資格確認がしやすくなる点です。歯科医院に限らず、医療機関では保険証の取り扱いなどで問題が生じやすく、何らかの問題が出ることがあります。手動で入力することによるミスも起こりやすいため、オンラインでの資格確認ができればその心配がなくなります。

医療DXのいいところは、アナログで行っていた作業が一気にデジタルとなるため、作業効率が格段に向上する点です。事務として働く従業員を含め、業務効率化の恩恵はかなり大きいと言えるでしょう。

歯科DXを推進する際の注意点とは

歯科 DX

歯科DXは患者にとっても歯科医院にとってもプラスと言えます。しかしながら、推進を急ぎ過ぎるとさまざまな問題が生じるのも確かです。

本項目では、歯科DXを推進する際の注意点について解説します。

DX関連の知識が必要となる

歯科DXの推進では、DXに関する知識が必要となります。電子カルテ・処方箋などを活用しようにも、どのように導入し、システムを作り上げていくかという部分は専門的な知識がないと厳しいでしょう。

専門的な知識を持つ外部の企業に委託するほかないものの、導入にお金がかかり、多大なコスト負担になることも十分に考えられます。どこまでDXを活用するかを事前に決めておく必要があるでしょう。

セキュリティ対策の重要性

紙のカルテの時代であれば、情報漏洩があると仮定した場合、誤って廃棄する、もしくは誰かが持ち出すといったことが考えられました。DXの導入によって、情報漏洩の可能性は「ハッキング」のケースが高くなります。

一方で、機密情報でありながら、その扱いが雑なケースも珍しくありません。雑に扱った結果、情報漏洩につながったケースは個人情報の漏洩の事案では多々あります。いかにセキュリティ対策を行っていくかも大事な要素となるのです。

歯科DXの現状

歯科 DX

歯科DXは導入が進めばかなり便利なものである一方、現状ではなかなか導入が進んでいないのが実情です。医療系でみると、全体の1割程度しか導入が進んでおらず、歯科医院においても同等と考えるべきでしょう。

小規模な歯科医院が多く、紙のカルテなどで十分事足りることも要因と言えるでしょう。マイナ保険証を巡る問題でも、紙の保険証が廃止される直前になってようやくマイナ保険証への対応が進み始めるなど、現状では歯科DXも必要に迫られなければ、導入が進まない可能性が想定できます。

歯科DXが進めば、業務効率化に伴い、人手が足りなくても十分に回せるようになり、医療機関の収益性向上につながる可能性があるのです。こうしたメリットを多くの歯科医院が体感できれば、歯科DXの動きは大きく変わるでしょう。

歯科DXの推進に向けた動きは?

歯科 DX

歯科DXは着実に進んでおり、歯科業務DXを提供する会社が第三者割当増資を行って、財務強化を行っていきます。まだまだ歯科DXの導入ハードルが高い中、企業によっては歯科DXに力を入れようとしています。

こうした企業の頑張りによって歯科DXの推進が進む可能性は十分にあるでしょう。各地で歯科DXに関するイベントが展開されており、今後歯科DXを当たり前に導入する歯科医院が増えるはずです。今はその準備段階にあると言えます。

まとめ

歯科DXは患者にとっても歯科医院にとってもメリットが大きいものです。あとは、歯科DXを導入する際のデメリットや課題への対策を立てることが求められます。歯科DXを扱う企業が増えたことで、歯科医院側にしっかりとした予備知識がなくても問題ない状況になりつつあります。

世界では医療でのDXが当たり前になりつつある中、日本もそれに遅れないように対策を立てる必要があるでしょう。

Writer

髙橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者