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2024.09.07

  • コラム

歯科医師は何歳まで働ける?歯科医師の平均年齢や引退を考える年齢、求人の年齢制限について解説

歯科医師 何歳まで

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

サラリーマンの場合には基本的に定年があり、65歳が定年のケースが一般的です。一方、歯科医師の場合は勤務医や開業医など働き方がさまざまなため、何歳が定年なのか、世間では知られていません。

本記事では、歯科医師は何歳まで働けるのかを中心に、求人の年齢制限や引退を考える年齢などを解説しています。

歯科医師の平均年齢は?

歯科医師 何歳まで

令和2年末における歯科医師の数は107,443人となっており、人口10万人当たりで見ても、85.2人と増加傾向にあります。歯科医師の平均年齢は52.4歳ですが、およそ9万人が働く診療所だけで見れば54.3歳と歯科医師全体の平均年齢よりも上です。

診療所の平均年齢は昭和末期や平成初期に46.4歳前後をマークしてからは右肩上がりが続いており、年々0.6~0.8歳ずつ高くなっている状況になっています。背景には30代や40代の減少と50代以上の増加が挙げられ、特に60代の割合が目立ってきました。

令和2年末ではわずかに50代の割合が一番多かったものの、診療所で働く人の人数で見ると100人にも満たない差しかありません。次の調査では逆転している可能性が極めて高く、サラリーマンでは定年として扱われる年齢で働く歯科医師が多いことは明らかです。

参照:厚生労働省

勤務医である歯科医師は何歳まで働ける?

歯科医師 何歳まで

そもそも勤務医の歯科医師は何歳まで働けるものなのか、本項目ではその傾向を探ります。

歯科医師は基本的に定年がない

歯科医師は国家資格である歯科医師免許を持っているうちは、いつまでも働き続けることが可能です。理論上は70歳、80歳、90歳でも働き続けられます。

そのため、「65歳になったので定年」と本来言われにくいのが歯科医師です。明確な定年がないため、歯科医師の国家資格をとってしまえば、生活は安定しやすいと言えます。

勤務医だと働き方が非常勤になるケースも

歯科医師 何歳まで

一方、勤務医の場合は一定の年齢に達すると定年として扱われ、常勤の歯科医師ではなくなる可能性があります。その代わり、非常勤の歯科医師として再雇用をしてくれるケースが少なくなく、働くことだけを考えれば、支障はあまりないと言えるでしょう。

歯科医師は技術的な要素が強く、手先の器用さが問われやすい職業と言えます。そのため、経験があればあるほどスキルは高くなりやすく、むしろ年齢を重ねている方が安心感を与えることもあるのです。そのため、勤務医の中には、定年がなかったり、あっても再雇用があったりと、年齢をそこまで気にしないで済む環境が整えられています。

歯科医師が引退を考える年齢は?

歯科医師 何歳まで

本項目では、歯科医師が引退を考える年齢について解説します。

年齢ではなく体力の衰えで引退を考える

歯科医師の国家資格さえとってしまえば、基本的に定年はありません。ゆえに、何歳になったから引退を考えるというケースは歯科医師の中では一般的とは言いにくく、体力の衰えで引退を考えるケースが目立ちます。

歯科医師は常に中腰のような姿勢で治療を行い、常に前かがみで身体に負荷をかけるだけでなく、細かな作業を要求されるため、眼も疲れます。ゆえに、腰痛などの職業病に悩まされやすく、それらの影響が引退を検討することに直結しやすくなると言えるでしょう。

40歳ごろから引退を考えているケースも

歯科医師 何歳まで

体力の限界まで歯科医師を続ける人がいる一方、40歳ごろから既に引退を考えて動き始める人もいます。40歳頃から引退を考えたケースでは、年金の受け取りに合わせて準備を進め、さまざまな年金制度を利用して老後の備えをしています。

また余裕がある段階で早々にリタイアして歯科医院の経営に専念するケースも見られます。一生涯現役として働き続ける歯科医師がいる一方、経営に専念し、治療は自らの息子などに任せるということもあるため、早い段階で引退を考えて行動していたかどうかも大事な要素となるでしょう。

歯科医師の求人募集で年齢制限がある?

歯科医師 何歳まで

本項目では、歯科医師の求人募集で年齢制限があるのかについて解説します。また、本項目では、非常勤で働く歯科医師に特化した情報をまとめています。

非常勤歯科医師求人は若手が多め

非常勤で働きたい歯科医師の求人は全体的に若い世代のものが多く、現状では30代までの求人が目立っている状況です。特に新卒の歯科医師などを求めている歯科医院の場合には、育成重視で考えており、どうしても求人の上限は低くなりやすいと言えます。

一方経験者を求めている歯科医院であれば、求人の上限は高くなりやすいでしょう。結局のところ、育成する前提での求人なのか即戦力の求人なのかなど、歯科医院が何を求めているかで求人の内容は大きく変わり、求めている内容がそのまま求人の年齢上限に直結するとも考えられます。

非常勤歯科医師の求人は65歳が目安に?

歯科医師 何歳まで

そもそも歯科医院で非常勤の歯科医師を採用する場合、急場をしのぐケースが多く、即戦力として働いてもらいたいと考えるケースと言えます。育成の余裕があるところは若手を獲得し、即戦力を欲しがる医院は多少年齢が上でも獲得してくれる可能性が出てくるでしょう。

しかし、たとえ年齢を重ねたベテランであっても、歯科医院の求人募集の上限が60歳ないし65歳を目安にしているケースが多いと、70歳や80歳の歯科医師が今後非常勤の歯科医師を目指すとしてもなかなか厳しい部分もあります。そのため今まで働いていた歯科医院で常勤から再雇用という形で非常勤に代わることはあっても、新規の非常勤歯科医師だと採用してくれるケースは限られるでしょう。

年齢のイメージが先行しやすいほか、60歳や65歳は体力の衰えも出始める時期だからこそ求人の上限も世間一般の定年の年齢に合うような形になりやすいです。

歯科医師以外は何歳まで働ける?

歯科医師 何歳まで

本項目では、歯科医師以外は何歳まで働けるのかを解説します。今回は歯科衛生士に着目してまとめています。

歯科衛生士は何歳まで働ける?

歯科衛生士も歯科医師と同様、国家資格を必要とする仕事なので、特定の年齢で免許を返すような行為は必要ありません。ですので、理論上は定年がなく、そのまま働き続けることができます。

定年を特に定めていない歯科医院であれば、歯科衛生士本人が納得のいくところまで働き続けることも可能です。もちろん、定年制度を採用している歯科医院もあるため、何歳まで働けるかは医院によってケースバイケースです。

ブランクがあっても復帰しやすいのが歯科衛生士

歯科医師 何歳まで

歯科衛生士は若いうちだと、転職を検討する人が多いなど、人材が安定しにくい傾向にありますが、年齢を重ねていくと転職する気が薄らぎ、今の職場で頑張ろうとします。子育てなどを終えるとより本腰を入れて仕事に取り組みやすくなり、歯科衛生士の仕事に取り組めます。

歯科衛生士の特徴は、ある程度のブランクがあっても復帰しやすい点です。現状の求人募集を見ても、歯科衛生士は求人倍率が異様に高く、超売り手市場と言えます。ゆえに即戦力を求める動きが強く、たとえブランクがあっても一定の経験を持つ人の方が重宝されやすい環境にあるのです。

歯科衛生士不足も手伝って、ブランクがあっても歯科衛生士であればかまわないというブランクの有無を気にしないで採用する歯科医院が少なくありません。その際に、ブランクの人が安心して再度働き始められる制度・環境が整っているかをチェックする必要があります。

歯科医師は引退前に考えておきたいこととは

歯科医師 何歳まで

最後に、歯科医師が引退をする前に考えておきたいことについてまとめました。

後継者を誰にするか

開業医が年齢もあって引退を考える際に必ず問題になるのが後継者問題です。自分の息子や娘が歯科医師であれば、そのまま引き継いでもらう手もありますが、その息子や娘も歯科医院を開業している場合には、なかなか引き継ぎもうまくいきにくいものです。

後継者不足は全国の歯科医院の課題になっており、後継者不足で困っているケースは半数以上に及びます。簡単に廃業できない背景には、今まで働いてくれた歯科衛生士や歯科助手も一緒に辞める形になるため、迷惑をかけてしまうことになるからです。

また地域医療を考えた際に、歯科医院がなくなることは地域医療の質に影響を及ぼすことも考えられるため、引退を検討し始めたら、どのように後継者を決めていくかも考えるべきです。

開業時に行った借金の問題

歯科医院を開業するにあたって、全額自己資金で賄うことは非常に難しく、多くのケースでは融資を受けたり、親族から借金をしたりと相手に委ねるような状態になります。

開業してしばらくして集客が順調であれば、借金は普通に返せる一方、なかなか集客が上手くいかずに苦戦を強いられ続けると、結果的に借金が残ってしまう場合もあるでしょう。引退後のことを考えると、先行きの不透明感が出てしまいます。

老後資金の確保も必要となるため、借金をどのように完済するか、引退を決断する前に目処を立てる必要があるでしょう。

老後資金の問題

開業医が引退すると、収入源がなくなるため、生活費をどのように工面するのかを検討しなければなりません。30代40代から個人年金に入る、iDeCoを行うなど収入を得るための対策が必要であり、老後に備えて早い段階で用意しないといけないでしょう。

また、個人経営の歯科医院と医療法人が経営する歯科医院では手元に残せるお金にも違いが出てきます。医療法人を活用すれば、節税にもつながるなど、老後資金やキャッシュフローを考えると医療法人化して一定期間頑張っていくことも大事です。

まとめ

90歳を過ぎても歯科医師として現役な方もいるように、一定の年齢を過ぎたら歯科医師を引退すべきというのは不適切です。一方で、ある時を境に衰えが出始めるのも事実であり、何を目安に引退するかは難しいところです。ゆえに年齢を目安にして辞める判断をするのもある意味では正しいと言えます。

できれば30代のうちから何歳まで歯科医師を続けるかを考え、引退後に向けて老後資金の確保を行うなど、できる対策を立てていくことで実際に引退する際に何の後悔もなく後継者に引き継ぐことができるでしょう。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者