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2024.09.07

  • コラム

大学病院で働く歯科医師の年収は高い?他の勤務医との比較や働きかたによる年収の違いについても解説!

大学病院 歯科医師 年収

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

歯学部がある大学では、歯科医師が多く働いています。「大学病院で働く歯科医師」と聞くと年収が高そうな印象を感じますが、実際のところはさほど年収は高くありません。なぜ年収に差が出ないのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、大学病院で働く歯科医師の年収にスポットを当て、年収が高くないとされる理由や年収をアップさせる方法などをまとめています。

大学病院で働く歯科医師の年収は?

大学病院 歯科医師 年収

そもそも大学病院で働く歯科医師の年収はどれくらいなのかを知る必要があります。本項目では、大学病院で働く歯科医師についてまとめました。

勤務医への調査から読み解く歯科医師の年収

独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った「勤務医の就労実態と意識に関する調査」では、経営形態別の勤務医の平均年収が紹介されています。歯科医師ではなく医師に関する調査ですが、国立の8,824,000円よりも平均が下回ったのが学校法人で、7,395,000円でした。

学校法人が経営する病院=大学病院となるので、少なくとも医師に関しては平均年収が安いことになります。歯科医師も同様のケースが考えられ、大学病院で働く歯科医師の年収はさほど高くないことが言えるでしょう。

参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構

大学病院で働く歯科医師の年収が低いとされる理由

大学病院 歯科医師 年収

本項目では、大学病院で働く歯科医師の年収が低いとされる理由についてまとめています。

歯科研修医の給与も含まれている

さまざまな調査で大学病院で働く歯科医師の年収が紹介されていますが、この中には歯科研修医の給与も含まれています。歯科研修医は基本的に給与が安く、最低賃金よりやや上ぐらいの給与しかもらえず、年収200万円台も珍しくありません。

先ほどの「勤務医の就労実態と意識に関する調査」では、経営形態別にみた勤務先の年収が紹介されており、年収300万円未満だったケースは学校法人で4.8%もありました。

こうした歯科研修医の存在が平均年収を押し下げていると考えられます。ただ、歯科研修医から一般的な歯科医師になったところで年収は他の医療法人などと比較しても突出して高くなるわけではないので、基本的には低く抑えられやすいと考えるべきです。

役職が多くてそれぞれ給与が異なる

大学病院 歯科医師 年収

大学病院はあくまでも「大学」という教育機関・研究機関なので、教授や准教授などの肩書きがつけられています。その肩書きに応じて給与が変わるため、歯科研修医を卒業すれば誰しもが一律同じだけの給料を手にできるわけではありません。

大学病院には医員や助手、助教と肩書きがあり、講師、准教授、教授と続いていきます。医員と助手、助手と助教では年収にも違いが生じやすく、当然教授になればそれなりの年収となります。

教授でも突出して給与が高いわけではないことを考えると、大学病院で働く医師・歯科医師の給与もさほど高くないことは明らかです。

営利目的でやっているわけではない

そもそも大学病院は営利目的でやっているわけではありません。一部の大学病院では、自由診療も行っていますが、基本的には教育機関・研究機関として存在しているため、教授なども研究を行っていく中で結果を出して、出世した人ばかりです。

営利目的ではない以上、収入の面でも多くの利益が生み出されるわけではありません。必然的に給与もある程度抑えられてしまい、結果として他の経営形態と比べて異様に高給取りが少ない状況を生み出しています。

大学病院における歯科医師の働き方

大学病院 歯科医師 年収

本項目では、大学病院における歯科医師の働き方について解説します。

専門医や認定医として働く

大学病院で働く場合には、歯科に関する研究を行い、学会での発表などをこなしていきます。結果として、学会に関連した専門医もしくは認定医となり、その分野のエキスパートになっていくのが特徴的です。

例えば、日本矯正歯科学会では、認定医や指導医、臨床指導医制度があり、学会の認定を受ければ肩書きをつけて活動できます。専門医になるには、学会が認定する研修施設に所属した上で実績を積み重ねて審査をパスする必要があります。多くの大学病院は何かしらの研修期間の認定を受けているので、認定医や専門医を目指す人にとっては大きなメリットです。

歯科医師としての仕事と研究を両立

大学病院 歯科医師 年収

大学病院はとにかく拘束時間が長いのが特徴的です。歯科医師としての仕事もこなす一方、研究も行い、時に講演会も行うなど、やるべきことがたくさんあります。一般的な歯科医院であれば、歯科医師としての仕事は患者の治療ぐらいですが、大学病院で働くとなればそういうわけにもいきません。

歯科医院で働く歯科医師と比べると、患者の治療を行う時間は少なく、研究や学生の指導などに充てられます。時に歯学部の6年生が、患者の協力の下で診察を行って、そのサポートに入ることも行います。

仕事内容は明らかに歯科医院で働く歯科医師とは異なりますが、それだけ学ぶことも多く、やりがいも多いと言えるでしょう。

大学病院以外で働く勤務医との年収の違い

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本項目では、「勤務医の就労実態と意識に関する調査」を踏まえた、大学病院以外で働く医師・歯科医師を含めた勤務医との年収の違いをチェックしていきます。

年収1,000万円以上をもらう勤務医の割合

「勤務医の就労実態と意識に関する調査」では年収500万円未満・年収1,000万円以上それぞれをもらう勤務医の割合について、経営形態別にチェックできます。

その中で年収1,000万円以上をもらう勤務医の割合は、医療法人では82.5%、個人では83.6%と高い数字を残しています。学校法人はわずか22.9%と明らかに低いため、大学病院で働く勤務医は年収1,000万円以上をもらえる割合が少ない傾向にあります。

ちなみに年収500万円未満にとどまっている割合は医療法人で3.9%、個人で5.4%となっていますが、学校法人は20%程度あります。

大学病院で働く歯科医師が年収を高めていくには

大学病院 歯科医師 年収

本項目では、大学病院で働く歯科医師が年収を高めていく方法を解説します。

バイトを行う

大学病院で働く医師・歯科医師はバイトを掛け持ちするケースが珍しくありません。例えば、訪問歯科を行う歯科医院でアルバイトとして働く際、日給を得る形でバイトが行えます。日給は週1日程度で数万円、月4回であれば20万円程度になります。年間にすれば200万円を大きく超えるため、かなりの高収入となるでしょう。

バイトでやることは、歯科医師としての診察業務などに限られるため、そこまで負担があるわけではありません。体力勝負ではありますが、開業資金を確保するなどの目的があれば、一時的であっても頑張りやすいと言えます。

教授などを目指す

大学病院 歯科医師 年収

大学病院で働き続けた上で年収を高めていく場合には教授などを目指すことになります。教授になれば年収は1,000万円以上が狙いやすくなるため、研究を一生懸命頑張って、学会で積極的に発表していければ、十分に可能です。

誰しもが教授になれるわけではなく、教授になるまでには相当な競争も予想されますが、研究に一生懸命取り組める方であればチャンスはあります。

将来的に開業を目指す

歯科医院を開業することで、年収をアップさせられます。バイトを行うと体力的にきつくなり、研究を重ねて教授を目指すのもやはり体力的な難しさが出やすくなりますが、開業医であれば、治療に専念できる分、負担度合いで考えると開業医の方が効率的に稼ぎやすいと言えるでしょう。

大学病院で認定医等の資格を得ていれば、その資格を活用して歯科医院の経営ができるため、信頼につながりやすく、結果として多くの患者を集めやすくなり、年収のアップにつながると言えるでしょう。

歯科医師が少ないエリアで働く

過疎地域かそうでないかで年収の割合をチェックすると、実は過疎地域の方が勤務先の年収が高くなりやすい傾向があります。2,000万円以上の収入があるケースは過疎地域ではないエリア(=歯科医師が豊富な地域)と比べて2倍程度多い結果が出ています。

今後過疎地域が日本に増えていった場合、歯科医師の存在がより重要視される時代が訪れる可能性が高いです。ゆえに歯科医師に有利になりやすい求人が今後増えることも予想されています。かと言えます。

大学病院で働く勤務医はバイトをする人が多数

大学病院 歯科医師 年収

「勤務医の就労実態と意識に関する調査」では、複数の勤務先で働く人にアンケートを行い、学校法人で働き、複数の勤務先で働く人の67%が「1つの勤務先だけでは生活自体が営めない」ことをバイトをする理由に挙げています。同じ質問を医療法人で働く人にすると、わずか15.4%しかありません。

医師と歯科医師では歯科医師の方が給与が少なめになりやすいことを考えると、歯科医師の場合、その傾向がより強くなる可能性が考えられます。すると、大学病院で働く歯科医師は、生活のためにバイトをする可能性が高いという予測が可能です。

まとめ

大学病院で働く歯科医師の年収はあまり高くはなく、人によってはバイトをするケースも考えられます。研究の意識が高い人が働く場であり、年収ありきで働くにはきついと言えるでしょう。しかし、認定医など専門性をつけるとなれば、大学病院はうってつけです。

一方、教授が変わると方針も変わりやすいという部分も大学病院にはあります。そのあたりのメリット・デメリットを踏まえて考えていくことも大切です。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者