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2024.09.07

  • コラム

歯科医院でのオートクレーブの重要性や基本的な使い方、滅菌する際の注意点、選び方について解説

オートクレーブ 歯科

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

歯科医院では日々治療のために多くの器具が用いられます。これらはしっかりと滅菌処理を行った上で再利用されますが、その際に用いられるのがオートクレーブです。オートクレーブの分類や選び方など、色々迷っている方もいるのではないでしょうか。

本記事では歯科医院には欠かせないオートクレーブの話題を中心に、オートクレーブの重要性や基本的な使い方などをまとめました。

歯科医院には必要不可欠なオートクレーブとは何か

オートクレーブ 歯科

歯科医院を開業する際には欠かせないオートクレーブとは何か、まずは基本的な情報を解説します。

オートクレーブの概要

オートクレーブは英語で「autoclave」と言い、「高圧蒸気滅菌器」を指します。外側は耐圧性の容器になっており、中を高圧力にして、特殊な化学反応を行い、病原菌などを死滅させることで滅菌が行えます。

高い圧力を加えた場合、本来100℃が沸点となるところ、高圧状態では100℃以上の沸点となり、水分を活用して化学反応を起こし、結果として滅菌につながるのです。病原菌の中には沸騰させたお湯ですら耐えしのぐ物が存在し、煮沸だけだと完全には滅菌できません。また熱を加えすぎると、容器そのものに悪影響が出る恐れがあります。

オートクレーブを活用することで、容器などを守りつつ、病原菌を完全に死滅させられるため、歯科医院など衛生的な状況が求められる現場で重宝されるのです。

歯科医院に導入するオートクレーブの分類

オートクレーブ 歯科

歯科医院で導入されているオートクレーブには分類があります。本項目ではオートクレーブの分類について解説します。

クラスB

クラスBはオートクレーブの中でも滅菌力がトップクラスに強いものです。クラスBのBはBigのBで、どんな種類の器具であっても滅菌が行えます。

例えば、ハンドピースのように細かなところが複雑な器具であっても滅菌できるため、確実に滅菌を行いたい場合にはクラスBのオートクレーブの導入が求められます。

クラスS

オートクレーブ 歯科

クラスSは2番目に強いオートクレーブの分類です。クラスSのSはSpecificのSで、「明確な」、「具体的な」等の意味があります。

クラスSは、ハンドピースなども滅菌を行えます。クラスBはどんな素材でも滅菌できますが、値段が高いため、ハンドピースなどに特化したクラスSのオートクレーブを導入している歯科医院が多いです。

クラスN

クラスNは多くの歯科医院で用いられている一般的なオートクレーブです。クラスNのNはNakedのBで、非包装の器具のみ滅菌ができるのが特徴となっています。使用頻度が多くないものをクラスNで滅菌し、保管しておく形です。

歯科医院におけるオートクレーブの重要性

オートクレーブ 歯科

本項目では、歯科医院で導入されているオートクレーブにはどんな重要性があるのかを、まとめています。

院内感染を防ぐ

2014年、新聞報道において、歯科医院で用いる器具を使い回しているケースが、歯科医院の7割に及んでいることが世間に公表されました。2014年時点で少なくとも3割の歯科医院のみが、患者ごとに滅菌をしていたことになります。

歯科治療において血が出ることは日常茶飯事で、血液がさまざまな器具に付着するのは避けられません。そんな中で患者ごとに器具を交換せず、使い回す行為は明らかに院内感染を誘発すると言えます。オートクレーブで滅菌を行うことで院内感染を防げるのです。

衛生面に力を入れていることをアピール

オートクレーブ 歯科

オートクレーブを導入することで滅菌対策につながりますが、ホームページで衛生面に力を入れることをアピールする際にオートクレーブを導入していると説得力を与えられます。

2014年の報道で大多数の歯科医院が器具の使い回しをしていることが報道されたため、「自分たちの歯科医院は衛生面に力を入れている」というアピールが必要になりました。オートクレーブはその主張に説得力を持たせるアイテムと言えます。

歯科医院でのオートクレーブの基本的な使い方

オートクレーブ 歯科

オートクレーブはどのように用いるのか、本項目では基本的な使い方について紹介します。

器具の洗浄

オートクレーブに入れる前に器具の洗浄を行います。歯科医院で用いる器具にはいくつかの洗浄方法があります。一番原始的な方法が「用手洗浄」です。文字通り手を用いて洗浄する方法で、血液がついた器具をゴシゴシと洗うのが特徴です。

他には洗浄液に浸して洗浄を行う「浸漬洗浄」、超音波洗浄機を使って洗浄する「超音波洗浄」、大量の器具を一度に洗うのにおすすめな「ウォッシャーディスインフェクター」などがあります。

これらの洗浄方法には一長一短がありますが、器具の形状などを踏まえて洗浄方法を選び、オートクレーブを用いる下準備を進めていきます。

器具の消毒

オートクレーブ 歯科

次に行うのは器具の消毒です。洗ったものをオートクレーブに入れるのではなく、その前に消毒も行います。消毒は専用の消毒液に器具を漬けるだけで、この工程によって器具内部の微生物などは相当数死滅させられます。

オートクレーブでの滅菌

消毒まで済ませたらオートクレーブでの滅菌作業に入ります。クラスBのオートクレーブを用いる場合、最初に真空状態にして蒸気が器具の内部まで満たされるようにしてから、圧力を加えていく流れです。

圧力が加わる中で加熱され、加熱状態を一定時間キープしてから真空乾燥の状態にします。真空乾燥の状態では低温になりやすいため、安全な滅菌が可能となります。加圧と真空を繰り返す中で完璧な滅菌につながるのです。

オートクレーブで滅菌する際の注意点

オートクレーブ 歯科

本項目では、オートクレーブで滅菌する際の注意点についてまとめました。

滅菌した後の保管方法

オートクレーブで滅菌を行ったあとは、正しく保管を行い、1セットずつにまとめて滅菌バッグに入れます。滅菌バッグに入れないと再び汚染してしまう可能性があるため、滅菌バッグに入れない場合、保管場所には細心の注意を払わないといけません。

仮に包装をしない形で保管する場合、清潔かつ乾燥している場所で保管を行った上で、オートクレーブで滅菌を行ってから24時間以内に用いることが厚生労働省が定めたガイドラインで示されています。

タイマーで管理する

オートクレーブ 歯科

オートクレーブで滅菌をする場合、診療時間内に行うのは治療との両立が難しいため、診療後に行うケースがほとんどです。オートクレーブによってはタイマーがついたものもあることから、診療が終わってから作業を行い、タイマーをかけて翌日の出勤時間に合わせる形で管理を行っていくのが一般的です。

仮に退勤直前に稼働させると、稼働が終わってからしばらくはオートクレーブの中に置いたままの状態になります。放置することに怖さがある場合には、出勤直前に滅菌・乾燥が終わるような形でタイマー予約を行えば、長時間放置させることなく稼働できます。

歯科医院で用いるオートクレーブの選び方

オートクレーブ 歯科

最後に、歯科医院で用いるオートクレーブの選び方をまとめました。

セミオートかオートか

オートクレーブはオートもしくはセミオートで動き、一般的なものはオートタイプです。オートタイプは滅菌したい器具を中に入れてスイッチを押せば、滅菌・乾燥を自動で行います。

セミオートタイプは、スイッチを入れて滅菌が始まる一方、乾燥の部分で手動の操作が入ります。値段だけを見ればセミオートタイプの方が安いですが、手間がある程度かかるため、オートタイプの方が扱いやすいと言えるでしょう。特に診療時間が終わって、診療時間外で滅菌や乾燥を完結させたい場合にはオートタイプが理想的です。

オートクレーブへの給水

オートクレーブは滅菌を行う過程の中で高温の蒸気が必要となります。この蒸気のために事前の給水が欠かせません。給水方式は精製水などを手動で入れていくタイプがある一方、水道水から浄水して給水するタイプもあります。浄水するタイプは自動給水が可能なため、とても便利です。

また、浄水せずに水道水をダイレクトに用いるオートクレーブも存在します。給水方式によってコストが変わるため、その点にも着目する必要があります。

オートクレーブのサイズ

オートクレーブのサイズは、業務で用いる器具の数量や歯科医院を利用する患者の数に合わせて決めていくのが一般的です。また、歯科医院のスペースの影響で、大きいものを使いたくても物理的に厳しいケースもあり、スペースなども考慮することが求められます。

スペースがさほどなく、それでいて多くの器具を滅菌していく場合には小さなオートクレーブを何台か設置する手もあります。

その他オートクレーブの機能

診療時間外でも利用できるように、タイマー機能がついたオートクレーブもあれば、運転時間・温度の調整が行えるオートクレーブもあり、各種機能も選ぶ際の大事な要素です。特に運転時間に関しては、温度を上げることで早めの乾燥が行えるため、状況に応じてオートクレーブの稼働を調整できます。

オートクレーブの中には低温乾燥が行える製品もあります。低温での乾燥を行うことで、器具をより大切に使っていけます。

まとめ

歯科医院において、器具を衛生的に活用していくのにオートクレーブは欠かせないアイテムです。現状ではクラスNを用いている歯科医院が目立ち、クラスBを用いる歯科医院は少数派ですが、より衛生面をアピールしたい歯科医院はクラスBのオートクレーブを導入する可能性も考えられます。

オートクレーブを選ぶ際には、設置するスペースや金額、普段使っている器具の数、患者の数などから総合的に判断することが大切です。ハンドピース専用のオートクレーブの導入など、効率的に活用していくことも重要となります。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者