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2024.09.07

  • コラム

医師と歯科医師の違いとは?|免許取得方法や医療行為の範囲の違い、なぜ医科と別なのかについて解説

医師 歯科医師 違い

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

同じ医師でも、内科や外科などの医師と歯科医師ではさまざまな違いが見られます。医師と歯科医師では仕事内容も大きく異なるほか、医師と歯科医師それぞれの免許を取るまでのルートも異なります。

本記事では医師と歯科医師の違いを中心に、いつから違いが見られるようになったのか、給料面での違いなどをまとめました。

医師と歯科医師の違いはいつから見られるようになったのか

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そもそも医師と歯科医師の違いはいつから出てきたのか、まずは歴史的な観点から解説します。

明治時代に独立した存在となった

日本において初の歯科医師が誕生したのは明治時代に入ってからです。当時は歯科に特化した試験がなく、眼科や皮膚科のように、1つの診療科として存在していました。医師と歯科医師が独立した存在となったのは1883年で、この時に歯科に関する規則が生まれています。

その後、1906年に医師法と歯科医師法が制定されたことで、医師と歯科医師は独立した存在となり、以降120年、今の状態が続いているのです。

人数で見る医師と歯科医師の違い

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医師と歯科医師は人数で見ても、若干の違いが見られます。本項目では、人数による医師と歯科医師の違いを解説します。

圧倒的に医師の方が多い

厚生労働省がまとめた「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、令和2年12月31日時点での医師の数は339,623人歯科医師は107,443人と圧倒的に医師の方が多いことがわかります。

過去30年の伸び率をチェックすると、医師の方は3%程度の伸び率をキープし続けているのに対し、歯科医師はここ数年1%を切る状態が続くなど、医師よりも緩やかに増えている状態です。人口10万人当たりの人数を見ても、医師は269.2人、歯科医師は85.2人と180人程度の違いがあります。

参照:厚生労働省

年齢別の人数でもチェック

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年齢別の人数で医師と歯科医師のチェックを行うと、医師は40代と50代がほぼ同じ人数となっており、その次に30代が来ています。30~50代がほぼ同じような割合となるほか、20代と70代以上の人数もさほど差がなく、バランスがいい状態と言えるでしょう。

一方、歯科医師の場合は50代が最も多く、その次が60代、次に40代と続いています。医師と比べても若干高齢化が進んでいることが垣間見えるほか、20代の歯科医師は70代以上の歯科医師よりもかなり少なめです。医師と歯科医師では、ボリュームゾーンのバランスにおいて大きな違いがあると言えるでしょう。

参照:厚生労働省

免許取得方法でわかる医師と歯科医師の違い

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医師と歯科医師の違いは免許取得方法にも表れます。本項目では医師と歯科医師それぞれの免許取得方法について解説します。

医師の免許取得方法

医師の免許を取得するためには、医科大学もしくは大学の医学部に入学し、6年間学ぶ必要があります。免許を取得してから2年間臨床研修を受け、その後医師としてのキャリアがスタートする形です。

医師の国家試験は2日間にわたって行われ、問題数は全部で400問と相当の多さで、制限時間も合計13時間40分と長丁場なのが特徴です。合格率は9割前後と高く、毎年8,000人弱が合格します。

歯科医師の免許取得方法

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歯科医師になるためには、歯科大学もしくは大学の歯学部に入り、6年間学び続けます。医科大学や大学の医学部に入って6年間学び続ける医師と仕組みはほぼ同じです。歯科医師の場合、2006年から「歯科医師臨床研修」がスタートし、1年以上の臨床研修を受けることが義務付けられています。

歯科医師の国家試験も2日間に分けられており、問題数は全部で360問とこちらもかなりの多さです。合格率は6割台と若干低く、毎年2,000人程度が合格します。歯科医師の数は飽和状態であるという指摘から、今後合格者の数を1,500人程度に減らす動きもあり、合格率が今後下がる恐れもあります。

仕事でわかる医師と歯科医師の違い

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医師と歯科医師では仕事の内容にもさまざまな違いがあります。本項目ではそれぞれの仕事との違いをまとめました。

医師の仕事

医師は、患者の診察、治療が主な仕事です。患者の診察は医師だけに認められた仕事であり、どのような治療を行うかは、診療科によって大きく異なります。例えば内科だけでも、脳神経内科や消化器内科など細分化でき、それぞれに高い専門性を必要とします。

また健康診断や人間ドックにおいて、健康状態をチェックして病気を見つけていくことも医師の仕事です。保健所で公衆衛生医師として働くケースや学校の校医として勤務するケース、さまざまな医療機関に出向いて働くフリーランスの医師など働き方も多彩です。

歯科医師の仕事

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歯科医師は基本的に、歯の治療を行うほか、保健指導や健康管理などを行います。虫歯や歯周病に対する治療や予防、抜歯なども歯科医師が行うほか、インプラント治療、審美歯科・矯正歯科に関連する仕事も行っていくのが特徴です。

また歯科健診も歯科医師の仕事で、学校歯科健診の仕事も行っていきます。他には、休日や夜間など多くの歯科医院がお休みの時に対応していく休日急患事業や高齢者の自宅や施設を訪れる歯科訪問診療、歯科に関連した啓蒙活動を展開していく啓発事業なども歯科医師の仕事です。

医師と歯科医師の違いは医療行為の範囲の違いにも見られる

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医師と歯科医師では、それぞれが行える医療行為にも違いがあります。本項目では、医療行為の範囲の違いについてまとめました。

医師ができる歯科関連の医療行為

医師も歯科関連の医療行為が行えます。外科の中には口腔外科と呼ばれる診療科があり、顎関節症を始め、口の周辺で生じた疾病・症状に対する治療が可能です。そのため、口腔外科に関連する医療行為は医師免許でも行えることになっており、抜歯や歯周病の治療なども医師は行えます。

一方で、歯の詰め物や入れ歯の作成、歯の矯正といった医療行為を医師はできません。これらは歯科医師の範疇となってくるためです。裏を返せば、それ以外の部分は医師免許があれば行えることを意味します。

歯科医師ができる歯科関連の医療行為

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歯科医師ができる医療行為は、医師ができない歯科関連の医療行為である歯の詰め物や入れ歯の作成、歯の矯正などです。また口腔外科の範疇にも入る口腔がんの診察や腫瘍の発見なども歯科医師が行えます。顎関節症も歯科医院で診てもらうことは可能です。

口腔外科が行う部分も歯科医師が担当できる一方、それ以外の部分に関連する医療行為は行えません。例えば、歯茎に麻酔注射はできても、筋肉注射は行えません。そのため、ワクチン接種も本来は行うことができず、新型コロナウイルスのワクチン接種ではさまざまな条件をクリアして例外的に認められた経緯があります。

年収で見る医師と歯科医師の違い

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医師と歯科医師では年収面で違いがあるのか、気になる方もいるはずです。本項目では、年収における医師と歯科医師の違いをまとめました。

歯科医師の平均年収

厚生労働省が行った令和4年度賃金構造基本統計調査では、歯科医師の平均年収は8,104,100円でした。前年と比較すると30万円程度上昇しています。平均年収の額面は勤務医の平均とされ、開業医の場合は平均年収を多くもらっている可能性が考えられます。

一方、毎年行われる賃金構造基本統計調査の結果は年度によって大きく異なり、別の年に平均年収が900万円台を記録したこともあります。あくまでも目安として考えた上で、800~900万円台が平均年収として認識した方がいいでしょう。

参照:厚生労働省

ちなみに年齢別でみると、40代以降の歯科医師は総じて平均年収が1,000万円を超えており、40代後半や50代後半で1,200万円に達している年代もありました。年代によってバラつきがあるのは、開業すると借金返済などの支出があって、一時的に年収が下がるためです。その後回復し、年収が再び上がる傾向にあります。

医師の平均年収

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医師の平均年収に関しても、厚生労働省が行った令和4年度賃金構造基本統計調査でチェックができます。医師の場合は1,428万円が平均年収です。男女で差があるのが特徴的であり、男性は1,514万円ほど、女性は1,138万円ほどと実に400万円程度の違いがあり、差は顕著です。

また、年齢別でみると、30代から年収1,000万円前後をマークし、40代後半から60代にかけて年収が1,800万円を上回っていました。勤務先別でみると、民間の医療機関の方が年収が高く、経営母体が国立や公的機関だと若干年収は低めです。

まとめ

医師も歯科医師も免許を取得するまでは同じような仕組みを辿り、臨床研修から若干の違いが出てきます。大きな違いはやはり年収の違いであり、医師と歯科医師で数百万円程度の違いがあり、格差があると言っても過言ではありません。

一方、働き方を見てみると、医師は24時間365日いつでも仕事を行う機会が訪れます。急患対応など、いつ何時呼び出されるかわかりません。その点、歯科医師はよほどのことがない限りは、急患で呼び出されることはなく、同じような時間帯で働くことが多いです。このような違いから、医師を目指すか、歯科医師を目指すかを決めていくことになります。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者