TOP > コラム一覧 > 歯科におけるレセプトとは?基礎知識や業務の流れ、必要な資格や注意点、オンライン請求の準備まで解説

2024.09.07

  • コラム

歯科におけるレセプトとは?基礎知識や業務の流れ、必要な資格や注意点、オンライン請求の準備まで解説

歯科 レセプト

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

皆さんは歯科レセプトをご存じですか?歯科レセプトは健康組合に診療報酬を請求する際に欠かせない書類です。歯科レセプトがなければ、歯科医院は診療報酬の一部しか受け取れないことになります。そんな歯科レセプトですが、どのように作成されていくのか気になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、歯科レセプトを中心に、作成や業務の流れ、必要な資格などを解説していきます。

歯科レセプトとは

歯科 レセプト

歯科レセプトとはどういうものなのか、まずは歯科レセプトに関する基礎知識について解説します。

歯科レセプトの概要

そもそも歯科レセプトとは、保険者に対して診療報酬を請求する際に作られる明細書を指します。患者が歯科医院で治療を受けた際、原則3割負担の費用を歯科医院に支払い、残り7割は患者が加入する健康組合が支払う形です。残り7割の費用を健康組合に支払ってもらうため、明細書を作成することになります。

健康組合などに診療報酬を請求するのは月に1回で、この時にレセプトを毎月分請求していきます。送付したレセプトは審査が行われたのちに明細書で記載された額が支払われるという仕組みです。

歯科レセプトの作成は誰にでもできる?

歯科 レセプト

ここからは歯科レセプトの作成は誰にでもできるのかについて解説していきます。

レセプトは誰でも作れる

歯科レセプトは診療報酬を受け取るために必要な明細書とあって、かなり重要な書類であることは明らかです。しかしながら、誰でも作れるのが歯科レセプトの特徴です。基本的に歯科レセプトは医療事務が担当する仕事ですが、歯科医院によっては歯科助手が担当するケースもあります。

極端な話、医療事務の仕事を今までやったことがない人がいきなり担当することも可能です。レセプトを作成するには、診療情報などを専用のソフトなどに書きこんでいけば十分であることもその要因と言えます。

一方でレセプト作成はミスが許されない

歯科 レセプト

誰でもできるレセプト作成ですが、歯科医院に入って間もない未経験の人がいきなりレセプト作成を任されるケースはほぼありません。最大の要因はレセプト業務の重要性にあります。

レセプトの内容が正しければ診療報酬が入るため、レセプトの内容が間違っていれば正しいものに是正されるまで収入がない形になるでしょう。すると、歯科医院の収益にも影響を及ぼします。患者から受け取れるのは本来歯科医院が受け取れる収入の3割のみです。大半はレセプトを通じて受け取らなければならないため、レセプトの間違いは死活問題と言えます。

重要性が非常に高いレセプト作成の業務を、レセプト作成を一切したことがない人に任せるのはあまりにも無謀です。レセプト作成は誰でもできますが、基本的には医療事務の経験者など、一定の実績を持つ人が担うことになります。

歯科レセプトに関する業務の流れ

歯科 レセプト

ここからは歯科レセプトに関する業務の流れについて解説していきます。

診療情報の入力

歯科レセプトを作成する際に欠かせないのが診療情報の入力です。歯科レセプトはレセコンと呼ばれるコンピューターに入力することで作成されます。自動的に点数計算を行うほか、記入した内容が正しいかどうかをチェックしてくれるのが特徴です。

一方、電子カルテとレセコンが連動しているものもあり、この場合は医師が電子カルテに記載するとそのままレセコンに記載されるため、医療事務などの手間が省けます。

レセプトの作成

診療情報の入力が終わったら、その内容を基にレセプトを作成します。といっても、入力されている情報が正しければ、あとは出力するだけで問題ありません。点数計算などわざわざ自分で計算をしなくても、レセコンが自動で計算を行います。

万が一間違いが見つかっても、レセコンに記入した段階で、間違いを見つけてくれる機能が備わっているものがほとんどなので、よほどのことがない限りはすんなり作成ができます。

医師にチェックしてもらって提出

歯科 レセプト

レセコンのチェック機能があるので、大きな間違いが起こりにくいものの、それでも間違いは起こり得るものです。そのため、医師にチェックしてもらい、点検が終わったものを保険者に提出していくような形になります。

レセプトには紙と電子の2パターンがあり、電子レセプトの方がスムーズなやり取りが行われやすいと言われています。

歯科レセプト作成に必要な資格

歯科 レセプト

歯科レセプトの作成は資格がない人でもこなせる作業です。しかし、資格があった方が確実に作業がしやすいことも存在します。ここからは歯科レセプトの作成において必要な資格をまとめました。

医療事務認定実務者

医療事務認定実務者は、医療事務に必要な知識・スキルを身につけた人に与えられる資格です。医療事務認定実務者はここ最近になって誕生した資格ですが、既に多くの人が受験しており、医療事務の仕事を行う人、これから医療事務の仕事を行いたい人にとって取得しておくべき資格です。

資格とはいえ、試験時には参考書などの持ち込みが認められており、勉強すればだれでも取得は可能です。医療事務の基礎を叩き込みたい人にとっては利用したい資格ともいえるほか、歯科レセプトの作成において取っておいて損はない資格となっています。

最大の特徴は在宅試験で受けられる点です。自宅で医療事務認定実務者の資格をゲットできるため、休みの日に自己研鑽に励みたい人にぴったりと言えます。

医療事務技能審査試験

歯科 レセプト

医療事務技能審査試験は、50年近くの歴史を誇る試験で、100万人ほどの合格者を輩出しています。医療事務のスキルを測る資格としては最大手と言ってもよく、現場のニーズにマッチした試験としても知られている資格です。

医療事務技能審査試験には医科と歯科の2つがあり、医科は毎月、歯科は年6回と決められています。この資格も在宅試験が行えるので、全国で受けられます。大きな特徴は患者接遇の実技がある点で、コミュニケーションの部分をチェックされるほか、レセプトの点検も実技の中に組み込まれているのが特徴です。

これらの資格の他には、医科医療事務管理士技能認定試験や診療報酬請求事務能力認定試験などもあります。

歯科レセプトに関する注意点

歯科 レセプト

歯科レセプトの作成や提出などにおいてどのような注意点があるのかを解説していきます。

戻ってくる可能性がある

歯科レセプトにおける最大の注意点は、レセプトが戻ってきてしまうことです。戻ってきてしまうことは、入金がなされず収益につながらないことを意味しており、由々しき事態と言えます。

戻ってくるケースは診療内容に対する疑いと氏名などの間違いがほとんどです。診療内容に対する疑いに関して、記載されている内容が本当に存在するのかという部分などで、疑わしい部分があれば指摘されてしまいます。診療報酬を不正に請求するケースは医科より歯科が多いと言われており、厳しい目が向けられやすい傾向にあります。

最悪の場合、保険医療機関として不適格と判断されて取り消し処分になる可能性もあるため、歯科レセプトの作成では慎重な対応が求められます。

点検の頻度が少ないと大変なことになりやすい

歯科 レセプト

レセプトは作成も大事ですが、点検も同じくらいに重要です。レセプトは毎月提出するため、提出の時期が来れば点検だけでかなり忙しくなるでしょう。すると、見落としが多くなり、結果的にレセプトが戻される可能性を高めてしまいます。

そのため、レセプトの点検の回数はできる限り多く、少なくとも週1回行うのが確実です。週1回であれば、見落としの可能性は低くなり、歯科医師に確認をした際に、何をしたか覚えていないなどのケースを少なくできます。

歯科レセプト作成とオンライン請求について

歯科 レセプト

最後に、歯科レセプト作成とオンライン請求について解説していきます。

今後オンライン請求が義務化になる可能性

現在レセプトの請求に関しては紙で提出することも可能ですが、今後オンライン請求が義務化になる可能性があります。特に歯科は紙での請求が現状多く、令和5年の段階でも半数以上が紙などでの請求を行っている状況です。

オンライン請求が義務化になる要因は事務的な手続きを効率よく行う必要があるためで、人手不足に対する対処策の1つとも言えます。そのため、厚生労働省では今後オンライン請求が100%の状態になっていくための対処を検討し、ロードマップの公開を行っています。

結果として、令和6年からはできる限りオンライン請求を行うよう求めていく流れとなり、紙での請求は段々と少なくなっていくと言えるでしょう。

マイナ保険証への切り替えがオンライン請求を後押しする

オンライン請求に関しては、さまざまな要因から多くの歯科医院で及び腰になっていた事情があります。セキュリティ面などを中心に不安が拭い切れないことが理由ですが、これらの理由はマイナ保険証への切り替えで払拭されると言われているのです。

現在医療機関では「オンライン資格確認」と呼ばれる、患者の資格情報をオンラインで確認するシステムが義務化され、マイナンバーカードもしくは紙の保険証で確認が行われています。今後紙の保険証が廃止され、マイナ保険証に移行することでオンライン資格確認はマイナ保険証でしかできないことになります。

すると、オンライン資格確認のための整備を行う必要があり、その流れに乗っかる形でオンライン請求もできるようになるという形です。今後歯科レセプトは電子レセプトとして作られ、用いられる時代になっていくと言えるでしょう。

まとめ

歯科レセプトは未経験でも作ろうと思えば作れるものの、やはり医療事務の知識や経験がないと間違いやすく、点検業務もおぼつかないのが実情です。より効率的な業務を行っていくには、こまめにレセプトの点検を行い、間違いを少なくしていくことが求められます。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者