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2024.09.07

  • コラム

歯科業界の現状と今後の課題や動向とは?今後ニーズの高い治療分野や求められていることについて徹底解説!

歯科業界 今後

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

日本では歯科医院の数がコンビニよりも多いと言われていますが、歯科医院が不足している地域も存在し、その分布には不均衡な部分があります。

このように歯科業界には今後解決すべき課題などが多く、将来的なことを考えていくことが求められます。

本記事では、歯科業界の今後に着目し、現状の課題や今の課題、今後求められていることなどをまとめました。

歯科業界が抱える現状の課題

歯科業界 今後

本項目では、歯科業界が抱えている現状の課題についてまとめました。

歯科医院が多すぎる

歯科医院の数は令和4年時点で67,755か所と減少傾向にはあるものの、依然としてコンビニの件数を大きく上回っている状態が続いています。一方で、新規開業と廃業も活発に行われており、新規開業・廃業共に年間1,000件以上あるような状況です。

参照:厚生労働省

都道府県別で見ると、地方都市を中心に廃業の方が目立つ一方、開業は都市部に集中しています。特に東京や神奈川、大阪は開業・廃止がそれぞれ100件以上を超えており、新陳代謝が激しく、激戦区の様相を呈しています。

いまだに歯科医院が多い状態ですが、地方都市ではどんどん歯科医院が減ってきており、歯科医院の環境という点で格差がついていると言えるでしょう。

人手不足が慢性化している

歯科業界 今後

令和4年に一般社団法人全国歯科衛生士教育協議会が行った「歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告」において、令和3年度の卒業者数6,978名に対し、求人件数が86,505件、求人人数が144,203名、求人倍率22.6倍という超売り手市場であることが明らかにされています。

参照:一般財団法人口腔保健協会

明らかな人手不足であり、求人を募集してもなかなか新人の歯科衛生士を確保できない歯科医院が多いと言えるでしょう。それだけ歯科衛生士はよりよい条件を求めて転職をしやすい状態にあるため、いかに歯科衛生士をつなぎとめられるかも課題の1つとなります。

診療報酬の改定

診療報酬の改定も歯科業界にとっては大事な要素です。2024年の改定では、子供に対する予防処置や高齢者の訪問診療に関連する診療報酬が改定されて、引き上げられています。収入を増やす歯科医院にとっては、今後子供の予防処置と訪問診療に力を入れることが求められます。

診療報酬の改定の際にはその都度対策を立てた上で対処していかなければならず、いかに臨機応変な対応をし続けるかも課題となります。

歯科業界が想定すべき今後の課題

歯科業界 今後

本項目では、歯科業界が想定すべき今後の課題についてまとめています。

自由診療に力を入れないと収益が確保できなくなる

歯科医院は保険診療が売上の比重を大きく占めている状況です。特に個人で経営する歯科医院だとその比重はさらに大きくなり、保険診療の収入が頼りになります。しかし、虫歯になる患者が減るなど、患者が今後減っていくのではないかと言われています。つまり、このままだと歯科医院の売り上げは落ちやすくなるのです。

そのため、自由診療に力を入れて、収益の確保を目指すことが求められます。自由診療は、歯科医院が自由に値段をつけられるため、近年の物価高にも対応しやすくなります。その分、技術面の強化などやるべきことも多く、その点で対応できるかどうかが収益を確保するためのポイントの一つとなるでしょう。

人手不足がより激しくなる

歯科業界 今後

現状でも歯科衛生士などの人手不足が厳しい状況ですが、今後もその状況は厳しくなると予想されます。歯科助手においても、医療事務のスキルを持っていれば病院の受付なども行えるため、歯科医院だけがライバルではなくなります

人手不足が慢性化している業界では、在留資格「特定技能」を活用する形で外国人で穴埋めをしていくケースが一般的です。そのため、今後は歯科医院でも外国人労働者を活用していく可能性も十分に考えられます。仮に外国人労働者を活用する場合には、雇用の受け入れを行うための対策も必要となり、いずれにしても課題は山積みです。

虫歯が減っていることへの対応

虫歯を理由に歯科医院を利用する患者が減っている状況にあります。虫歯や歯周病が身体全体に与える影響を懸念する動きが強まっているためで、口の中の健康を意識する人は年々増えている状況です。そのため、歯の治療だけに力を入れることはあまりいいことではありません。

そこで予防歯科にも力を入れるほか、定期検診を促すなどして売上を確保する動きも強まっています。

歯科業界において今後ニーズの高い治療分野

歯科業界 今後

本項目では、ニーズが高まりそうな治療分野について解説します。

訪問歯科

今後高齢者がどんどん増え、高齢化が加速することは確実です。少子化を考えると、子供の予防処置よりも高齢者の訪問歯科の方がニーズは高くなりやすいと言えます。また、要介護認定を受けた高齢者はなかなか歯科医院で治療を受けられないため、訪問歯科のニーズは高まりやすいでしょう。

訪問歯科を始めるにはさまざまな準備や手続きなどを要しますが、ニーズがある以上は収入につながりやすいほか、地域医療への貢献を考えると間違いなく貢献度が高い分野と言えます。

審美歯科

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審美歯科の中には自由診療の治療があり、ホワイトニングやインプラントなどが該当します。保険を適用させて詰め物を作ろうとしても劣化などもあって、長持ちしないこともあるでしょう。質のいい材料を使って詰め物を作るということも自由診療であれば可能です。

矯正歯科

近年は歯の矯正に興味を持つ人が多く、さまざまなやり方で歯の矯正を行うケースが増えています。今まではワイヤーを使うやり方が普通でしたが、裏側にワイヤーをつけたり、マウスピースをつけて矯正を行ったりするなど、やり方は多種多様です。

多彩なやり方、負担の少ないやり方を多く取り入れて矯正に活用している歯科医院は人気になりやすいです。

歯科業界が今後求められていくこと

歯科業界 今後

本項目では、歯科業界が今後求められていくことについてまとめています。

介護サービスとの連携

要介護認定を受けた高齢者は年々増えており、その割合は右肩上がりの状況です。一方、高齢者の歯科医院の受療率は年齢を重ねていく中で低くなっていくため、口腔ケアをいかに行えるかが重要となります。訪問歯科などを行い、介護保険を活用しながら口腔ケアを行っていくことも必要です。

介護サービスとの連携を進めることで、何かあればすぐに駆けつけるかかりつけ医的な存在となり、リスクを抑えることが可能です。歯を失うことや歯周病になることで健康に大きな悪影響を与えるため、介護サービスとの連携は必須と言えます。

利便性の高さ

歯科業界 今後

コンビニよりも多い歯科医院の状況を鑑みると、「単に近くにあったから」という理由だけでは選ばれない時代です。利用することでお得な感じがする、利便性が高いと感じるといった価値が求められる時代になっています。

この場合の利便性には、予約のしやすさがあるほか、負担の少なさなども入ってきます。虫歯だけを溶かして痛みを感じずに治療を行える治療法があれば、これほどいいものはありませんし、歯科医院が苦手な人も安心です。こうした利便性の高さをアピールしていくことも必要となるでしょう。

歯科業界の将来性

歯科業界 今後

歯科業界自体は少なくとも順風満帆とはいかないでしょう。人口減少社会に突入するだけでなく、歯への健康意識が高まっている以上、虫歯や歯周病を抱える患者が減り、歯科医院の経営に影響を及ぼすことも考えられます。しかし、歯への健康意識が高まっているということは、これから予防歯科の需要が高まるということでもあります。

また、歯の矯正やホワイトニングなど見た目を気にする人が減ることは考えにくく、自由診療に活路を見出す歯科医院も増えることでしょう。

歯科業界の今後は明るい?

歯科業界 今後

歯科医院を開業すれば誰しもが年収が倍になるような時代でなくなったことは言うまでもありませんが、適切な経営努力をすれば十分に可能であることも確かと言えます。歯科医院としての経営ビジョンを持てる人が開業することで、今まで通りもしくはそれ以上の状態を狙うことは可能です。

歯科衛生士に関しても現状では求人の数が多く、超売り手市場となっているからこそ、技術力などを高めてよりよい条件で仕事をできる場所を求めていけば、年収も一定以上確保できる可能性も十分に考えられます。

まとめ

歯科業界の現状は一見すると厳しい部分もありますが、一方で改善すべき点や変わらなければいけない点がはっきりとしている分、努力で改善・克服できる余地がある時代になっていると言えます。今までの固定概念にとらわれず、新しい時代の変化に適応できるかどうかが、今後の歯科経営では大事になってくると言えるでしょう。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者