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2024.09.07

  • コラム

カルテの保存期間とは?正しい考え方や保存方法と注意点、電子カルテと紙カルテの違いついても解説

カルテ 保存期間

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

病院・クリニックなどを利用する際、個人のカルテが用意されます。このカルテは一定期間保存されるため、その間に利用すれば、過去どのような病気で利用していたかがわかります。そんなカルテですが、いつまで保存されるのか、皆さんはご存じですか?

本記事ではカルテの保存期間を中心に、カルテの保存方法や保存の際の注意点、電子カルテと紙カルテの違いなどを解説します。

カルテの保存期間を知る前にそもそもカルテとは何かを解説

カルテ 保存期間

カルテとはどのような意味合いを持つものなのか、まずはカルテの基本的な情報について解説します。

カルテの概要

カルテはドイツ語で地図やカードなどの意味合いがあり、患者の診療情報などを書き込むためのものです。ちなみに、ドイツではカルテという言葉に診療情報を書き込む意味合いはないため、日本でしか通じない言葉と言われています。

一時期まではドイツ語でカルテを書くことが一般的でしたが、現在はドイツ語で記載するケースはほとんどなく、ドイツ語ではなくフランス語を大学で学ぶなど、状況は大きく変わりつつあります。

カルテに書き込まれること

カルテ 保存期間

カルテには、患者を診療した内容や、その後の経過、処方箋の内容、看護記録などが書き込まれます。日本におけるカルテは診療記録として用いられることが多く、その人がどんな治療を受けて、どのような経過で回復していったかなどが詳細に書かれていきます。

そのため、カルテを見ればその人の状況がおおよそわかることから、カルテを保存し、すぐに適切な治療ができるようにしているのです。

カルテの保存期間とは

カルテ 保存期間

ここからはカルテの保存期間について解説をしていきます。

カルテの保存期間は5年間

基本的にカルテは5年が保存期間となっています。これは医師法や歯科医師法でカルテの保存期間が定められているためです。

そもそも医師法、歯科医師法においては、診療したら遅滞なくカルテに書き込まなければならないと定められ、カルテに関しては5年保存しなければならないという記載があります。

カルテ以外にも保存すべき文書が多くある

カルテ 保存期間

医師法、歯科医師法ではカルテの保存が定められていますが、実はカルテ以外にも様々な法律で医療機関が保存しなければならない書類がたくさんあります。例えば、薬剤師法では調剤が済んだ処方箋を保管しなければなりません。

こうしたカルテ以外の保存すべき文書に関しては原則として3年間の保存が求められます。カルテ以外に保存すべき文書は数多く存在し、法律だけでも20種類前後存在しており、適切な管理が必須となります。

保存期間に注意が必要

カルテとそれ以外の保存すべき書類には5年もしくは3年という保存期間の違いがありますが、実は保存期間の考え方にも決定的な違いがあります。カルテ以外の保存すべき書類に関しては診療日から3年というルールがありますが、カルテに関しては「完結日から5年」というルールになっているのです。

この場合の完結日は治療が終わった日を指しているとされ、治療が完結したとは断言できない場合には診療日から5年が経過してもすぐには廃棄できないルールとなっています。カルテ以外の書類は診療日ベースで考えればいいですが、カルテは完結日ベースなので、うっかりとしたミスには注意が必要です。

電子カルテに関する保存期間のルール

カルテ 保存期間

近年は紙のカルテではなく、電子カルテで管理するケースが増えています。ここからは電子カルテに関する保存期間のルールについて解説していきます。

電子カルテでもルールは同じ

紙であろうと電子データであろうとカルテであることに変わりはないので、基本的に電子カルテであっても、そのルールは紙のカルテと同じです。そのため、完結日から5年などのルールが電子カルテにも適用されます。

一方で、マイナ保険証など医療DXが推進されている背景から、電子カルテをすぐに共有できるようなネットワークが構築されている状況にあります。

電子カルテと紙のカルテの保存期間以外の違い

カルテ 保存期間

電子カルテと紙カルテの決定的な違いは、共有しやすいかどうかです。例えば、紙のカルテを別の場所に持ち出された場合、そのカルテを戻してもらわないことには閲覧することができません。しかし、電子カルテであれば、タブレットなどですぐにチェックできるほか、わざわざ持ち出す必要がないのです。

一方で、電子カルテの場合はデジタルで入力される分、字の汚さなどで判別できないといったことがありません。特に電子カルテであれば数字のミスが生じにくいため、うっかり多く投与してしまうようなことを避けられます。

またレセプトを作成するにあたり、電子カルテとレセコンを連携させれば電子カルテで入力した情報がすぐに反映されるため、効率的な運用が行えます。紙のカルテだと再度入力を余儀なくされるほか、字の汚さなどで判別できず何度も確認が必要になる可能性も出てくるでしょう。これらの点をなくせるのが電子カルテのいいところです。

電子カルテの保存期間以外に注意すべき点

カルテ 保存期間

電子カルテで保存する医療機関が増えているほか、今度電子カルテで保存することを検討する医療機関も増えることが予想されます。ここからは電子カルテの保存期間以外に注意すべき点について解説します。

電子カルテとして認められるには手間がかかる

電子カルテはパソコンなどコンピューターで作られるカルテですが、ここで重要になるのが原紙の存在です。紙のカルテの場合はそのものが原紙となるので特段手間がかかりませんが、電子カルテの場合は電子上で作られたカルテが「原紙」となるため、単に作成しただけでは改ざんの可能性が出てきてしまいます。

そのため、改ざんされないための対処が必要です。正当な電子カルテとして認められるためには電子署名とタイムスタンプの付与が欠かせません。この2つがあることでようやく原紙として認められます。

紙から電子への切り替えに注意

カルテ 保存期間

今まで紙のカルテだった医療機関が電子カルテへ移行することも十分に想定できます。この場合、紙のカルテをスキャンする形で電子カルテへ切り替えていくことになりますが、電子署名とタイムスタンプがやはり必要です。

この電子署名も厚生労働省が定めるものなどを使わなければならないため、ちゃんとしたものでないと原紙とは認めてもらえません。スキャンしてそれで電子カルテが出来上がるわけではないため、注意が必要です。

スキャンした後の紙カルテの扱い

もう1つ注意が必要なのが、スキャンした後の紙カルテの扱いについてです。スキャンして電子署名やタイムスタンプを押したら紙カルテはお役御免…とはなりません。実は日本医師会では紙のカルテに関して永久保存を推奨しており、電子カルテは電子カルテで活用しつつ、紙も残しておくべきという考えがあるからです。

そのため、スキャンした後の紙カルテは倉庫に保管することが確実であり、最近では厚生労働省が設定した条件を満たす外部の会社に委託する形が望ましいとされています。

カルテの保存期間と同じくらい重要な「電子保存の3原則」とは

カルテ 保存期間

電子カルテを保存する際には、「電子保存の3原則」と呼ばれるものを満たしていることが重要になります。ここからは「電子保存の3原則」とはどういうものかについて解説します。

真正性の原則

真正性の原則は、誰の目から見ても作成した人に責任やその所在が明確になっている状態を指します。改ざんや書き換え、消去、ウソの内容の記載などがないようにしたり、あったとしてもその責任を問える状態にしたりすることが求められます。

電子カルテでは、カルテに入力した人の責任を明らかにしていくため、タイムスタンプや電子署名を付与することはもちろん、不正アクセスを防ぐ対策など、さまざまなことを行う必要があります。これらがあってようやく真正性を出していくことが可能になるのです。

見読性の原則

カルテ 保存期間

見読性の原則は、電子カルテに保存している内容に関して、いつでもすぐに見ることができる状態にすることを指します。電子カルテは医療従事者がすぐに確認できることはもちろん、患者や家族に対してもすぐに見てもらえるような状態にするのが理想的です。

すぐに電子カルテがみられるような状態にしておくために、検索すればすぐに表示される状態にするなどの対処が求められます。

保存性の原則

保存性の原則は真正性や見読性を確保しつつ保存も行えるようにする状態を指します。ちゃんとした状態で保管すること、いつでも確認できる状態にすることは当然であり、その状態で保存し続けることが大前提となります。

一方で、何かしらの要因で情報が読み取れない可能性や外部のハッカーの攻撃などさまざまな要因でデータが破損することもありえる話です。保存性を確保し続けるために、常日頃から管理や劣化対策を万全にし、バックアップなどを取っておくことも必要です。

電子カルテの保存性を確保するため、記録媒体の劣化対策、ソフトウェアの管理、こまめなバックアップなどの対策が必要です。

まとめ

カルテの保存期間は明確に決められていますが、完結日をどこにするかはなかなか難しい話であり、ゆえに永久保存を求める声があると言えます。紙から電子への切り替えにおいても、電子署名やタイムスタンプの活用が必須になり、長らく紙のカルテで対応していた病院にとっては大変です。

しかしながら、電子カルテにするメリットはそれだけ大きく、しっかりと保存できれば万が一の時にも対応しやすくなります。導入するまでが大変ですが、順調に運用が進んでいけば、電子カルテの方が使い勝手が良く、安全面などにおいても紙のカルテより確実でしょう。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者