世間的には、「歯科医師は儲かる」と思われやすい状況です。歯科医師からすれば、他の職種と比べて歯科医師は儲かるのかとあまり考えないため、実際はどうなのかを確かめることは、今後を考えても大事なことと言えます。
本記事では、歯科医師の年収ランキングに着目し、他の職種と比較した上での歯科医師の立ち位置や規模別・年代別・地域別などさまざまな観点からのランキングをまとめました。
目次
全職種別の年収ランキングにおいて歯科医師の立ち位置は？
本項目では、歯科医師を含めた全職種別の年収ランキングをまとめています。
歯科医師は全体の7位
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」による職種別の年収ランキングでは、1位が航空機操縦士、いわゆるパイロットで1,576万円でした。次いで2位が医師で1,279万円、3位が大学教授で1,063万円、そして歯科医師は7位で800万円でした。
令和4年賃金構造基本統計調査を見る限り、医師と歯科医師では500万円近い差がある一方、一般的に年収が高いイメージがある公認会計士や税理士よりも歯科医師は稼げるほか、「小・中学校教員」と少ししか年収の差がない事実にも気づかされます。
参照：政府統計の総合窓口
開業医だともっと稼いでいる可能性
賃金構造基本統計調査はサラリーマンなどを対象にしているため、開業医などは対象ではありません。先ほど紹介した歯科医師や医師の年収は勤務医としての数字で、開業医の年収はまた別にあると考えるべきです。
歯科医師における開業医の平均年収はおおよそ1,200～1,400万円程度とされており、歯科医師でも開業医であれば大学病院などに勤務する医師と同じレベルの年収を確保できると言えます。サラリーマンとしての歯科医師は全体の7番目、個人で開業すればトップクラスの年収を確保できる可能性は十分にあります。
歯科医院の規模別でみる歯科医師の年収ランキング
本項目では、歯科医院の規模別でみる歯科医師の年収ランキングを解説します。
10〜99人規模の歯科医院で勤務している歯科医師の年収が最も高い
2021年に行われた「賃金構造基本統計調査」では、10～99人規模の歯科医院に勤務する歯科医の年収が最も高く、814万円でした。その次が1,000人以上で760万円、その次が100～999人で733万円です。
本来、大企業であればあるほど年収は上がっていきやすい傾向にあります。しかし、歯科医師に関してはその傾向から外れており、むしろ規模が多少小さめな歯科医院の方が年収面ではいいと言えるでしょう。
圧倒的に多い「企業規模10～99人」の歯科医院で働く歯科医師
中小企業は中企業と小企業に分けられ、小企業は「企業規模10～99人」、中企業は「企業規模100～999人」となっています。企業規模別の歯科医師の割合では、歯科医師のおよそ8割ほどが「企業規模10～99人」の歯科医院で働いている状況です。
「企業規模10～99人」の歯科医院で働く歯科医師は全体の8割を占めているため、この規模で働く歯科医師の平均年収が結果として歯科医師全体の平均年収を決めていると言っても過言ではありません。
年代別で見る歯科医師の年収ランキング
本項目では、年代別で見る歯科医師の年収をランキングにまとめています。
40歳を超えると勤務医の平均年収は1,000万円を超える傾向に
2021年に行われた「賃金構造基本統計調査」では、最も高い年代は60～64歳で、1,359万円でした。その次が45～49歳で1,174万円、次に55～59歳の1,088万円、65～69歳の1,082万円、40～44歳の1,059万円、50〜54歳の973万円と続きます。
年齢が高い方が年収も高くなりやすい傾向にあると言えるでしょう。特に40歳を超えると、年収1,000万円を超える方が多く高年収であることがわかります。
一定の経験を重ねてから年収が上がる傾向に
一方、若い世代の年収は決して高いとは言えず、20代後半だと404万円しかありません。これはストレートに歯学部を卒業し、研修を重ねて本格的に歯科医師になって間もないため、ある程度賃金が安く抑えられていることが考えられます。
また、「賃金構造基本統計調査」では、30～34歳になると665万円、35～39歳になると854万円と年収が増えていく様子が見て取れます。経験を重ねていくことで、年収が増えていくと言えるでしょう。
地域別でみる歯科医師の年収ランキング
次にご紹介するのは、地域別でみる歯科医師の年収ランキングです。
都市部ではない意外な県が1位に
2020年に行われた「賃金構造基本統計調査」での都道府県別歯科医師の平均年収をチェックすると、1位は富山県で1,825万円、2位が長野県で1,777万円、3位が大分県で1,503万円でした。
ちなみに東京は626万円、大阪府は830万円と必ずしも都市部の方が年収が高くなるわけではありません。神奈川県のように549万円しかないケースもあり、ランキングを見ればかなりの地域差があると言えるでしょう。
地域別平均年収は参考にならない？
一方で、「賃金構造基本統計調査」の地域別平均年収は参考にならないという意見もあります。サンプル数が地域によって異なるので、そのエリアの実態に伴う平均年収ではない可能性が高いと言えます。
また、「賃金構造基本統計調査」では、データがなかった県があるなど、あくまでも参考として判断していくことがおすすめです。
国別でみる歯科医師の年収ランキング
本項目では国別でみる歯科医師の年収ランキングをまとめました。データは2015年の情報を参考にしています。
スペインの平均年収は破格
1位はスペインの176,000ドルで、2015年当時1ドル120円だったため、2,112万円が平均年収と破格の高さです。スペインでは定期検査、レントゲン、抜歯に関しては無料で行える一方、虫歯治療などは実費となっています。つまり、普段の歯の治療において保険が効かないのです。
ほとんどが自由診療のような形であり、結果として平均年収の高さにつながっていると考えられます。
日本は8位
2位のアメリカは146,340ドルで、2015年時点ではおよそ1,756万円と日本よりかなり高めです。3位はスイスで96,800ドルと2位アメリカとの差が実に50,000ドルもあります。
以下、ノルウェー、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアと続き、8位に日本が来ます。日本は当時71,500ドルと日本円にすれば858万円なので統計調査と比べても大きな差はなく、ほぼ正しい数値と言えるでしょう。
時間効率で見るアメリカと日本の違い
アメリカにおける歯科医師の給料は現状では150,000ドル以上と年々高くなっています。アメリカでは歯科医師の労働時間は週平均で40時間以下と1日8時間程度、週休2日制となっているため、日本と比べると労働時間は短めです。
時給換算をすれば明らかにアメリカの方が時給は上と言えます。アメリカの場合は国民皆保険制度が整っているわけではないので、普通に歯の治療を行うにもお金がかかります。保険診療中心の日本と比べると、アメリカと日本で大きな差がつくのは当然と言えるでしょう。
研修歯科医の年収は？
最後に研修歯科医に関する年収についてまとめています。
研修歯科医は最低賃金レベルの給与しかもらえないことも
厚生労働省は、臨床研修施設が研修歯科医に対して支払う給与に関して、最低賃金額以上の給与を勤務医の初任給とのバランスを取りながら支払う必要があると回答しています。最低賃金額程度の給与を渡しておけば特に問題はないことが示されていると言えるでしょう。
参照：厚生労働省
実際に研修歯科医の月給は10万円台のケースが多く、20万円を超えるケースはかなり少ないと言われています。一方、歯科医院によっては初期研修1年目の歯科研修医の年収が450万円というケースもあり、必ずしも最低賃金レベルしかもらえないとは限りません。また、日額で設定しているケースなど、支払いのパターンは研修を行う施設によって異なります。
各病院の募集要項でチェック可能
研修歯科医の給料は、各病院のホームページにある募集要項でチェックできます。「賃金構造基本統計調査」では20～24歳の年収は226万円となっていますが、月給20万円でも多いとされる研修歯科医の給料で判断すると、実態に即した数値と言えます。
大変なのは研修歯科医の時期だけで、晴れて歯科医師として本格デビューしてしまえば、給料は一気に増えていきます。
まとめ
歯科医師の年収は職業別で見れば勤務医でも十分高く、開業医となれば、かなりの年収になることがわかります。一方で、年収1,200～1,400万円もあるような開業医は経営努力を重ねてきた開業医であり、経営努力を怠った開業医となると話は別です。
研修歯科医の1年目は年収的には大変ですが、研修を終えれば年収は一気に上がります。歯科医師に向けての最後の総仕上げとなるのが研修歯科医の時期なので、ガムシャラに頑張って高年収を勝ち取っていくことになるでしょう。
