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2024.09.07

  • コラム

医師が歯科医師を見下す?歯科医師が抱くコンプレックスとその対策、仕事のやりがいや難しさについて解説

医者 歯医者 見下す

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者

医師と歯科医師は同じ医療従事者でありながらも、根拠となる法律が違うため、厳密に言えば違う職業と言えます。そのせいか、「歯科医師よりも医師の方がすごい」、「歯科医師は誰でもなれる」と歯科医師を見下す意見もネット上では多く見受けられます。

本記事では、医師が歯科医師を見下すのは本当なのかという話題を中心に、歯科医師が抱えるコンプレックスやコンプレックスへの対策、仕事のやりがいなどをまとめました。

医師に見下されていると感じる歯科医師が抱くコンプレックス

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まず本項目では、医師が見下していると感じやすい、歯科医師が抱くコンプレックスについてまとめました。

医学部に落ちて歯学部に入ったという経緯

歯科医師になるには歯学部に入る必要がありますが、最初から歯科医師を目指して歯学部に入った人もいれば、医学部を希望したものの歯学部に入った人もいます。医学部希望だったのに学力が足りずに歯学部に入ったという経緯があると、医学部に対するコンプレックスが生まれやすくなるのです。

偏差値だけを見ると、医学部よりも歯学部の方が確かに多少偏差値が低くても入れるところがあります。こうしたこともあって、医学部に対するコンプレックスが作られていくと言えるでしょう。

親は医師だが自分は歯科医師

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医師を目指す人の多くは、親や兄弟、親戚が医師であり、医師になるのが当たり前という雰囲気で育ってきた人も少なくありません。そんな中、家族で自分だけが歯学部に入り、歯科医師になったことに対して、「自分だけが違う…」と感じる人もいます。

もちろん歯科医師は国家資格であり、医師と遜色がない仕事です。しかし、周囲が医師ばかりで自分だけが歯科医師という状況にコンプレックスを抱く方もいると言えるでしょう。

歯学部に対する周囲への偏見

学生時代に、歯学部に対して一部の人たちが偏見を抱いており、それを見聞きしたことでコンプレックスになってしまったケースもあります。特に偏差値の違いがあるため、歯科医師は偏差値が低くてもなれると思っている人がいて、そのことをネット上などで吹聴しているケースも見られます。

実際には国家試験に合格しなければならないため、必死に勉強をしなければ合格は難しいと言えるでしょう。それでも医学部の上という意見に触れて、医学部との違いを痛感し、悔しい気持ちがコンプレックスにつながると考えられます。

医師に見下されていると感じずに済むコンプレックスへの対策

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さまざまなコンプレックスを抱えることがある歯科医師ですが、本項目ではこうしたコンプレックスへの対策についてまとめました。

医師と比較をしない

なぜ歯科医師が医師に対してコンプレックスを抱くかと言えば、医師と歯科医師の比較を行ってしまうからです。医師と歯科医師では給料が違うほか、仕事の内容にも違いがあります。違いばかりに着目すると、コンプレックスを抱きやすくなるでしょう。

しかし、医師にはなくて歯科医師にだけある仕事もたくさん存在します。歯科医師だからこそできることも多くあるため、比較しても意味がありません。医師と比較をしないだけでも、コンプレックスを抱かずに済みます。

歯科医師は専門職であると誇りを持つ

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歯科医師は専門職・技術職であり、歯の治療は歯科医師にしかできないことなので、誇りを持って対応すべき仕事と言えるでしょう。歯科医師は歯の治療を行う中で、細かな作業を要求されるため、歯科医師として活躍し続けるのはかなり大変です。

スキルアップにも時間がかかるため、まさに職人の仕事と言えます。職人技が欠かせない仕事に対して、誰しもが尊敬の念を抱くはずです。専門職であるという誇りを持てれば、コンプレックスを抱く必要はありません。

スキルアップを行い医師よりも稼ぐ

歯科医師と医師では医師の方が年収が上になりやすい事情があります。しかし、自由診療で行える治療が多いのも歯科ならではであり、自由診療に力を入れれば、普通の医師よりも稼げる可能性は高いと言えるでしょう。

歯科医師で一定額を稼げるようになれば、医師に対するコンプレックスは解消されやすくなります。また、医師に対するコンプレックスをバネにしてスキルを磨いて差をつけていくという考え方でもいいでしょう。

歯科医師にあって医師にはない仕事のやりがい

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本項目では、歯科医師にあって医師にはない仕事のやりがいについて解説します。

歯の治療が全身の健康につながる

医師の場合、特定の診療科に関する治療を行い、その診療科の範囲で健康に貢献できます。一方、歯科医師は歯の治療を通じて全身の健康に貢献できるのです。例えば、歯の健康を守り続ければ、糖尿病の抑制や認知症の予防につながります。

歯の本数が多ければ、どんな食事でも堪能できます。逆に歯の本数が少ないと食事に制限が生まれやすく大変です。歯の治療が与える影響は大きく、治療に関与する歯科医師はまさに偉大な仕事であると言えるでしょう。

日々最新の技術に触れられる

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歯科医師の場合、年々技術革新が進み、保険適用の中でさまざまな技術が活用できるようになっています。また、自由診療の中で最新の技術に触れる機会も多く、技術が出てくるたびに勉強を行う歯科医師も少なくありません。

医師も最新の技術に触れて学ぶこともありますが、基本的には最新の技術に触れなくても、目の前の患者の治療をしていれば問題ないケースが多いでしょう。歯科医師は患者に負担をかけないような技術を多く知っていれば、それだけ患者に施しやすく、評価を得やすい仕事です。ゆえに、やりがいにもつながりやすいと言えるでしょう。

医師よりも歯科医師になる方がハードルは高い

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本項目では、医師よりも歯科医師になる方がハードルが高い理由についてまとめました。

国家試験の合格率の違い

歯科医師の合格率は2024年で66.1%とここ10年は60%台をキープしています。合格者数は2,000人前後をキープし続けており、合格者の数をキープし続けていることが合格率が60%台をキープする要因となっているのです。今後歯科医師の合格者数を1,500人にする動きが出ており、その場合、合格率が下がる可能性が考えられます。

参照:旺文社

一方、医師の合格率は2024年で92.4%と歯科医師と比べても明らかに高いことが言えます。合格者数も9,000人前後をキープしており、医師よりも歯科医師の方が合格者数が少ないことは明らかです。

参照:マイナビ

こうした国家試験の合格率の違いを見ても、歯科医師の方がかなり高いハードルであることが言えます。

常に臨機応変な対応が求められる

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歯科医師は日々歯の治療を行いますが、常に何かしらの作業が生じるため、手先が器用でないと務まりません。医師であれば、体調を崩した患者を目の前にして問診を行って薬を出すケースが多くありますが、歯科医師は問診を行って薬を出すだけではダメで、何かしらの歯の治療が生じます。

治療においても臨機応変な対応が求められ、柔軟な対応も必要となるでしょう。その都度、歯科衛生士や歯科助手との連携が必要となるので、毎日手術をこなし続けるぐらいの緊張感で挑むことになります。

歯科医師を見下す動きは歯学部時代に目立つ?

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歯科医師がコンプレックスを抱くケースは、歯学部時代に集中しています。例えば、医学部に落ちて歯学部に入ったケースも、歯学部に入って間もない時期ほど強く感じやすいコンプレックスです。また収入に関しても、仕事をし始めて最初の時期に差を痛感しやすいと言えます。

しかし、歯科医師になってから医師に対するコンプレックスを持ち続けるかといえば、実際のところ、段々と薄らぎ、医師に見下されていると感じる機会は減るでしょう。少なくとも歯科医師を見下す医者は、自分の仕事を全うしていない可能性が高く、優越感に浸ろうとしているだけです。

歯科医師が歯科医師としての誇りを持つには、今の仕事に真剣に取り組むことがすべてと言えます。それさえできれば、医師へのコンプレックスは必要なく、医師に見下されている感覚を抱かずに済むと言えるでしょう。

アメリカでは見下されるどころか歯科医師が憧れの職業に

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実はアメリカにおいて、歯科医師は憧れの職業とされ、アメリカで調査された、なりたい仕事のランキングでは歯科医師が上位に来ています。2013年には「U.S. News & World Report’s list of 100 jobs」において歯科医師が1位でした。

少なくともアメリカでは歯科医師は見下されるどころか、憧れの職業となっています。ランキングで上位に来る理由として、収入面や業界としての成長度合いなども関係しているとされており、今後日本でも同じような傾向になる可能性も考えられます。

まとめ

医師が歯科医師を見下すケースは医学部・歯学部の時代にあっても、実際に医師・歯科医師になってから見下す・見下されるというケースはあまりありません。仮に見下す医師がいたとしても、医師として結果を出している可能性は低いでしょう。

歯科医師は毎日歯の治療を行い、手先の器用さを求められる分、スキルを磨く必要性に迫られるため、医師に嫉妬している場合ではありません。むしろ、自由診療に力を入れて年収を上げていくことができるため、上を見ながら取り組んでいくことが求められます。

Writer

高橋 翔太

医療法人社団しん治歯科医院 COO 兼 事務長
日本で唯一のストック型歯科医院専門コンサルタント兼歯科医院の経営者